(No.25-2001.2)【曽徳深】


 東南に面した2坪足らずの三角地に、コンクリートをはがし土を入れて木を植えた。10年ほど前のことである。ひめ沙羅、どうだんつつじ、山茶花、そして藪北種の茶樹。まもなくして、友人が中国から持ち帰った龍井茶の苗木をくれた。藪北から離して植えた、近いと影響しあって都合が悪いだろうと勝手に思っての上である。桃の木が棗の陰になって、かわいそうなので、それもその三角地に移した。1メートル足らずの木だが、翌年小さな実を例年になく多くつけた。桃の木がお礼の気持ちを表してくれたと、勝手に思っている。旅先でラベンダーを、むかしよく聞いた「マザーグース」の歌のあのラベンダーがこんな可憐な紫か、と感心して家に持ち帰って、ひめ沙羅のそばに植えた。
 狭い三角地に木々がひしめき合っている。肥料はやった記憶がない。夏の盛りの草取りは、やいやい言われるまでやらない、当方が名前を知らないだけで、雑草と呼んでいる命あるものを、むしりとっていいのかと思いつつやるためか、あちこち取り残す。殺虫剤は、葉っぱがあっという間に食い荒らされたときに慌てて撒いた。いいかげんな世話しかしていないわりに、ひめ沙羅以外はどれもたくましく育っている。楚々と咲いていたラベンダーも根元が三周りも大きくなって地面の一角を覆っている。お茶の木は、緑茶を作る試みが失敗してから数年この方手をつけてない、今や龍井茶は隣の山茶花と背を並べるまで枝を伸ばし、寒空のもと盛大に白い花をつけている。
 こんな放任的な扱いを、植物達が喜んでいるかどうか聞いてみたい。


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