ゆきちゃんの
おいしい中国語

煎/少量の油で焼く




 あまり鍋をかきまわさずに、じっと表面を焼く調理法、あるいはからいりする調理法を「煎(jian)」という。「鍋貼」といわれる「焼き餃子」を焼くのも「煎」。ブタ肉・牛肉あるいは野菜だけのまんじゅう「包子」を大きな平らな鉄鍋に並べ、水をたっぷり注いで蓋をして焼き餃子のように蒸し焼きにする「煎包」もある。魚など、表面を焦げ目がつくまでソテーするのも「煎」だ。鍋の表面にくっついて、香ばしく焼ける雰囲気。目玉焼きなんかもやはり「煎」だ。
 初めて天津に旅行に行った時は、公共バスの乗り降りがうまくできず、間違った場所で降りては引き返すことの繰り返しで、疲労困憊、空腹のまま学生寮で眠った。翌日、天津を案内してくれるという友達が迎えに来てくれて、開口一番「ごはん食べた?」と聞かれたので、「飢えている」と答えると、一大事というように、屋台で「煎餅果子」を買ってくれた。「果子」は揚げパンの総称、「餅」は小麦粉を薄く伸ばして焼いたものの総称で、詳しく言うと、薄焼きのクレープの上に卵を落として卵焼きを薄く伸ばし、そこに薬味みそとネギをちらして、油条(膨らませた生地を油であげた空洞の多い細長い揚げパン)をのせ、くるくると包んだものが「煎餅果子」だ。辛いソースをさっと塗って、薄い紙に包んで、ほい、と渡されたそれは、「煎」されたクレープが熱々で香ばしく、おいしく、しっかりした朝食になった。
〈浅山友貴〉



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