(No.27-2001.6)【曽徳深】


  油塩米麺魚肉菜 
  咸甜酸辣苦鮮味 
  阿媽厨房楽乎乎 
  喟得孩子笑哈哈 

 韻を踏んでいないが詩のつもりです。大意を訳すと、最初の2行は字面とおり料理の素材と味、後の2行は、「かあさんの台所はウキウキ楽しい、子供らはたらふく食べてワッハハ」です。
 母親の思い出は食べ物です。終戦の年、中華街の大通りに面したトタンバラックの前で、両親はドーナツを揚げて売った。配給物資の小麦粉、油、砂糖を使ったドーナツは大人気、いつも長蛇の列でした。空襲の焼け跡に生えた青菜を摘んできて、スープにして食べた。葉は青なのに汁は青紫色しておいしかった。しばらくして食材店を始めた。しいたけ・干し貝柱・干し鮑・干しえび・フカヒレなどを香港の船員が買って帰り、そして彼らが持ってきたふるさと中国の食品が代わりに店先に並び、近所の人が買っていく。年末になると、母は大忙しになる。豚肉、鶏、家鴨を調味液に漬けて干す。片糖(板状の赤砂糖)を使って年●をつくる、そして大根餠。それらは一部自家用、大半が店に並ぶ。評判を聞きつけて買い求める人が増えると、大根を千切りしたり、餅を練ったりするのを子供は手伝わされる、それが意外とおもしろく、年末になるといつ始めるのとせっつく。正月の食卓に年末に仕込んだ品々がのるが、その他に、フカヒレスープ、醤油鳥、煎大蝦、煎魚が加わる。フカヒレスープは大なべいっぱい作る、子供たちはご飯にかけて何杯もおかわりする。50年前の光景です。
 母が82歳の生涯を終えた時、遺品を整理したら、大きなダンボール箱にフカヒレと干し鮑が出てきた。鮑はむしが食っていたが、フカヒレは、今ではめったにお目にかかれない極太もので、まさに金色に輝く金翅だった。
 一瞬、家族のにぎわいが部屋に満ちた。



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