中華街でニイハオ!
翔 SHOU


陳有章さん


 「鉄観音」「煌ファン」「烏龍茶」「聞茶」「熟茶」「プーアル茶」…、出揃ったこの夏の中国茶飲料、あなたのお勧めは?
 「缶入り烏龍茶で初めて中国茶を味わったという人は多いんですよ。25年前、弊社は日本で初めて烏龍茶葉を業務用にバルクで中国から輸入しました。その後日本全体での中国茶葉の輸入量は年々増えていて、統計では1975年大陸茶葉165トンが99年には2万2千トンほどになっています。大半が缶飲料の原料です。」
 語るのは、中国貿易専門商社・新光貿易株式会社の陳有章(ちんゆうしょう)さん、72年生まれ28歳。中国茶担当5年。
 「今また中国茶がブームと言われています。今までと異なる点は、茶館の開店と、たとえば烏龍茶を手の込んだ工夫茶器を使って飲むなど、高級茶をじっくり本格的に飲む時代になったことです。小売り店も増え多彩な中国茶の魅力を身近に味わうことができるようになりました。」 
 新光貿易は中国茶葉をメーカーや中国料理店に納めるだけでなく、すでに20年前に中国茶小売り専門店「悟空」を横浜中華街に、そして三年前に茶館「悟空」を立川に開店するなど、中国茶の魅力を日本に伝える先駆的存在である。この会社、創業以来33年、中国茶のほか中華食材を主に扱ってきた。高級スープに欠かせない「金華火腿(ハム)」も、秋の味覚「上海ガニ」も業務用に扱ったのは日本でここが初という。曽徳深社長曰く「好奇心旺盛で、日本にないよいものを探し出して開発し輸入するのがおもしろい。」
高校時代、水泳部で活躍
 さて、陳さんである。陳さんは祖父母が広東省から来日した三世。「学校は大学まで日本の学校です。家庭では日本語で過ごしていたので、中国語はできなかったんですよ。私が小学校に上がる時、大陸系の中華学校に入るか台湾系の中華学校に入るかで両親がもめたんです。どちらの学校に入るか、と聞かれた子どもの私は『日本の学校に入る。』と答えたことを覚えています。」 大学は工学部卒業、理科系人間。「学生時代に中華街でアルバイトしていた時、中国人なのになぜ中国語できないの、とよく言われたんです。これではいけないな、と思った。」陳さんは大学を休学して広東省にある曁南(きなん)大学華文学院に一年留学する。
 「中国にかかわりある仕事をしたいと思って、この会社に押しかけて面接してもらいました。」
 入社した陳さんは仕事とはいえ中国茶の魅力に開眼する。ついには中国で中国茶葉研究所のセミナーを受講し、「中国国家茶葉質量監督検験中心認定・評茶員」つまり茶の品質をチェックできる資格まで取ってしまった。「悟空」や「菜香新館・清芳春」で不定期に開かれる《中国茶講習会》では講師を務め好評、また招かれて中国茶の魅力を語る機会も増えた。
 「中国でも今、お茶がブームです。高級緑茶を磁器やガラスのしゃれた器で飲むとか、烏龍茶を工夫茶器で飲ませる茶館や茶芸館が増えていますし、高価な茶も売れているようです。」扱う茶の種類は150を超え、紹介したい茶はまだまだたくさんあるという。昨年から陶器で有名な中国は宜興の方圓牌ブランドの茶壼(急須のこと)の輸入も始めた。陳さんの挑戦は始まったばかり。
 「中国茶は奥深いです。飲んでおいしいだけでなく、背後にある中国文化に興味が広がります。お茶は世代を超えて人と人をつないでくれます、楽しい時間をともに過ごすことができますよ。」茶を集め、茶器を集めることも楽しい、と仕事を超え趣味の一つにもなった中国茶、その魅力を語る。「中国茶のよさ、楽しさ、その背景に広がる文化を、日本の人に伝えられたらいいなと思っています。それは、日本で生まれ育った中国人という私の立場からも適任ではないかな、と思っているんです。」 中華街で陳さんを見かけたら声を掛けてくださいネ。「中華街のタイガーウッズ! がんばって。」
(インタビュー 新倉洋子)



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