トゥン/煮込む




 秋になると恋しくなるのが煮込んだお料理。中華料理で肉の煮込みを「トゥン肉」という。鶏を煮込んだ「トゥン鶏」もあるけれど、ふつう「トゥン肉」というと、弱火にかけてコトコト煮込んだ豚肉を指している。作り方は、油で砂糖を焦がしてキャラメルをつくり、そこに肉を入れ、水と紹興酒を注ぎ、葱、ショウガ、胡麻油少々、醤油の他、黒胡椒、山椒、五香粉の風味を効かせて飴色に仕上げる。じゃがいもや大根をいっしょに煮ても味が染みておいしい。
 排骨(骨付き肉)を煮込んだ「トゥン排骨」は、滋養がたくさんあふれてくるようなおいしさ。骨離れがよく、肉の甘味が出て五香粉の風味と良く合う。
 排骨の他にも、トゥン肉には、「五花肉」(バラ肉)が良いといわれている。余分な脂は一度冷まして白く固まってから取り除けばよく、その脂と汁は、炒め物やスープ、ラーメン等に加えるとおいしいコクが出るので捨てない。 皮付きのものが好きな人もいる。皮付きの肉で作ると、ゼラチン質がおいしいだけでなく、皮膚が若々しくなるそうだ。皮と骨ごと煮込んだ鶏肉にもゼラチンが含まれている。熱いうちはわからないが、冷ますと常温でも煮汁がゼリー状に固まるので、たっぷりゼラチンがあるのがわかる。乾燥しやすい冬にかけて、トゥン肉は、食べる保湿クリームになるかもしれない。
〈浅山友貴〉



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