擠(ジイ)/ぎゅっと押す




 お正月、中国の北方では家族総出で餃子を作る。厚い皮の餃子はぷっくりふくらんで、昔の銀貨の形にそっくり。お皿に山と盛られて白く輝く様子は銀貨がぎっしり盛られているよう。縁起のいいお正月の雰囲気。
 胚芽まじりの黒っぽい小麦粉もおいしいけれど、お正月は、真っ白な皮を銀貨に見立てて、福を招きたい。つやつや輝く皮は、もちろん手作り。讃岐うどんのようにモチモチしているので、水をつけなくても、ぴったりくっついて茹でている間に餡(あん)が出るようなことはない。
 皮をくっつける動作を「擠(ji)」という。たとえば「擠眼」は目をぎゅっと閉じてウインクすること。バスがこんでいる状態も「擠」。ぎゅっと押し合う感じ。だからギョーザをつくる「擠餃子」は、皮を集めるようにくっつけるという意味になる。
 お正月、「擠」する時には、おみくじクッキーみたいなことをして遊ぶ。よく洗った軽い硬貨を1枚、餃子の中に入れるのだ。これに当たった人は1年間豊かに過ごせる。硬貨が嫌なら、小さなビー玉、それも抵抗があれば、甘く煮た棗とか、アーモンド。要は、それが当たりだとわかればいい。
 今年こそ、幸運の餃子が当たりますように! でも、今年は「あれ?また幸運が!」と次々に笑顔がこぼれるようたくさん幸運を包んでみよう。
〈浅山友貴〉



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