(No.33-2002.6)【曽徳深】


 「夢の野にひとりひっそりたたずめば山に幸せ訪れる也」「新たなる友を得たりて喜ばんわれを導け世界へ飛ばせよ(新しい友達に贈る歌)」「夜の炎を追い追い進む田舎道儚き命暑き夏の日(ホタルを初めて見に行った日に詠んだ歌)」「母の声心がおどる見つけもの虹だ虹だと美しき母(虹が出たとき詠んだ歌)」「赤き火を身にまといしその心若き日々を続けよ生きよ(フラメンコを踊る伯母、明美さんの誕生日を祝って詠んだ歌)」これらの歌は、日木流奈(ひき るな)君が6歳のときに作った歌である。
 日木流奈君は今年12歳になる。すでに9冊の著書があり、5月に10冊目の『人が否定されないルール』と題する本を出した。流奈君は誕生直後の手術の影響で、脳に障害を受け、話すことも立つこともできない。文字盤を使って会話をし、詩を書く。「交流会」で各地の人々と話し合う。4月最終の日曜夜放映されたNHKスペシャル「奇跡の詩人〜11歳 脳障害児のメッセージ」は、流奈君のドキュメントであった。ドーマン法と呼ばれるリハビリプログラムで、100人のボランティアに支えられて「生理面」「知性面」「運動面」のトレーニングを行いつつ、母親のひざに抱かれて、2千冊の本を読破し、指で文字盤を指し、母親が読み取り、母の声を通して流奈君の思いが届けられる。人々は癒しを得、心を力で満たし、ある人は会社を辞め新たな人生を歩み出す。最も弱いと思われる者が発する不思議なエーテルが、最も強い力を持って確実に何かを変えていく。
 彼方へ/見よ!思いの集まりし日/全ての魂は翔ぶ/心の花に乗って
 彼方へ/夢の子どもは全て新しき花となる/花と一体となりし魂は、夢を生み真実を奏でる/彼方、それは死をも乗り越えた彼岸


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