おいしいお茶を(1)
曽慕蓮(元・山西師範大学)


イラスト/浅山友貴
訳/豆彩編集部




 お客さまにお茶を勧めることは、中国人の伝統的な美徳です。どのようにしたらお客さまの気に入るおいしいお茶をいれることができるか、これには知識が必要です。
 おいしいお茶をいれようとしたら、もちろんまずよい茶葉です。よく飲まれる茶は緑茶・紅茶・花茶・烏龍茶・プーアル茶、そのなかで名茶と呼ばれるものは何百もあります。どの茶葉がいいの? 答えは「青菜も大根もそれぞれよいところがある」、各人の好みと習慣で決まります。ただ一つだけ言えることがあります、どんな種類の茶葉でも、早春に採取した柔らかな若芽を上等品とすることです。春茶の若芽にはアミノ酸・ポリフェノール・ビタミンや芳香物質などがより豊富に含まれています。
 よい茶葉の次は、よい水です。みなさんは西湖龍井(ロンジン)茶が茶の王だとご存じでしょう、この龍井茶を杭州の虎●泉の水でいれたら、透き通った色、上品な香り、こくのある味が一層引きたちます。上海に行ったことのある人ならわかるでしょうが、上海の水は沸かした後も塩素のにおいが鼻につきます。上海は川の下流にあるので途中の汚染の影響を受け水質が悪い、それで飲料水の基準を満たすため、塩素を加えることが必要です。このような水で高級茶をいれるのはお茶の葉に対する侮辱です。そこで杭州の虎●泉など、上海周辺で良質の水源のあるところは水をたるに詰めて上海で売っています。上海人は金を出してわが龍井茶を買い水まで買ってくれる、と杭州人は得意げです。杭州まで行かなくても自分の家で 「龍井茶と虎●泉の水」を味わえる、と上海人も喜んでいます。まさに『天国ではないけれど天国よりいい』ではないですか(昔から「上有天堂、地有蘇杭」、杭州は地上の天国といわれています)。水は含有物の関係で硬水と軟水に分けられます。中国北方の水は硬水、南方の水は軟水、日本の水も軟水です。どのお茶も軟水でいれましょう。
 よい茶、よい水がそろったら、それに見合う茶器が必要です。「赤い花は緑の葉にひきたてられる」。たとえば紫砂の急須で龍井茶をいれたりガラスのコップで沱茶をいれたら、見た目はよくないし味もかなり落ちるでしょう。龍井茶のような高級緑茶は、ガラスコップでいれるのがよいと言われます。香りと味のほか、ガラスコップなら茶葉の色と形を楽しめますし、薄くて口が広いので、柔らかな若芽を使った高級緑茶を蒸らさないのです。成長した茶葉を使う烏龍茶やプーアル茶などは、紫砂の茶器を使うとよいですね。紫砂の茶器は形いろいろ、飾り気なく上品です。茶のうま味をうまく引き出し冷めにくく、一晩おいてもお茶が傷まない、という長所があり、多くの愛好家に好まれ収蔵されています。ただ明・清時代から現在まで広く使われているのは磁器製の茶器で、これはいろいろな茶葉に使えます。特に江西省景徳鎮の白磁、浙江省龍泉の青磁は有名です。茶葉に適いそして優美な茶器を使えば、お茶の香り・味・色・形を十分味わい、優雅で高尚な気分に浸ることができるでしょう。


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