| 
千禧門(ミレニアム・ゲート)
|
| 世界の街角で |
| バンクーバーのチャイナ・タウンを歩く |
|
|
| 文・写真/伊藤泉美(横浜開港資料館調査研究員) |
|
|
8月の末に、バンクーバーのチャイナ・タウンを訪れた。滞在は3日と短かったが、横浜華僑総会会長曽徳深氏のご紹介でカナダ中華総商会会長越棠氏が案内してくださったので、非常に内容の濃い訪問ができた。
|
さて、バンクーバー・チャイナ・タウンの起源は、横浜の中華街と同時期である。横浜開港の1859年の1年前、58年にバンクーバーを河口とするフレイザー川で金鉱が発見され、ゴールド・ラッシュが起きた。そこで、金を求めて、多くの中国人がサンフランシスコからバンクーバーに移動してきたのである。さらに、81年から84年まで、バンクーバーからカナダ東海岸のハリファックスまで、カナダ太平洋鉄道の敷設工事が行われた。その労働者として多くの中国人が移住して、チャイナ・タウンが形成されていった。
|

漆でガラスを貼った柱 |
|
チャイナ・タウンはバンクーバー市中心部から歩いて20分あまりの場所に位置する。東西はアボット・ストリートからジョージ・ストリート、南北はユニオン・ストリートからヘィスティング・ストリートまでに囲まれたあたりが、チャイナ・タウン、華埠である。中心はペンダー・ストリートで、東に向かって緩やかな登り坂になっている。この通り沿いには、レストラン・文化施設・食品店や衣料店などが建ち並んでいる。まずは中国文化センターと博物館を見学し、バンクーバーにおける華人社会の変遷を写真パネルなどで学ぶ。センターに隣接して孫逸仙記念公園がある。これは本格的な明朝建築様式の庭園で、この中を歩いていると、カナダの都市にいることを忘れてしまいそうになる。
ペンダー・ストリートをすこし下がると、中華街の入口にあたる牌楼・千禧門(ミレニアム・ゲート)に達する。この門は2001年に建造された新しいチャイナ・タウンのシンボルである。ここから再びペンダー・ストリートを登る。通り沿いの建物の中には、歴史的建造物が少なくない。
たとえば、旧永生号の建物は1889年の建造。永生号は葉生が開いた商店で、カナダ太平洋汽船の代理店業務などを行っており、葉家の記録はブリティシュ・コロンビア大学に残されている。また、中華会館、洪門民治党、禺山公所などの建物は20世紀初頭に建てられたものである。
|
|
中華会館は1895年に創設され、1909年に現在地に移転。事務所の中には螺鈿細工の祭壇の後ろに孫文の肖像写真と「天下為公」の扁額がかかっていた。洪門民治党では一つの発見をした。洪門民治党は1863年に創設された秘密結社・慈善団体で、1907年に現在地に移転。建物の中には関帝をまつった祭壇があり、その祭壇を拝見したところ、「広東省城聯興街」「許友三」という彫師の名が確認された。この「広東省城聯興街」「許友三」は横浜の中国人墓地・中華義荘の中にある地蔵王廟の祭壇にも刻まれている名前である。広州―横浜―バンクーバーと張りめぐらされた広東人ネットワークが、祭壇に刻まれた「許友三」の文字から浮かび上がってくる。
|
バンクーバー滞在中、ブリティッシュ・コロンビア州では、大規模な山火事が起こっていた。8月27日の夜にチャイナ・タウンの富大海鮮酒家で山火事被災者へのチャリィ・パーティが開かれた。「We
Love British Columbia」をスローガンに、中国系の州議会議員や地元有力者をはじめ、1千人を超える人々が集まり、盛大な宴会が催されて多額の義捐金が集まった。華僑華人社会の地元への貢献を現す出来事である。
|
|

シュエ・タ・ラカウンで
|
横浜市とバンクーバー市は1965年に友好都市提携を結び、横浜中華街とバンクーバーチャイナ・タウンも97年に友好中華街提携を結んでいる。その交流の成果でもあるが、近年、バンクーバーのチャイナ・タウンでは、千禧門の建造など、街づくりの取り組みを積極的に展開している。チャイナ・タウンは基本的に商業地区で居住地区でないため、日が沈むと人気がなくなり、治安が悪くなる。その点を改善するため、カナダ中華総商会をはじめとする組織では、自警団で夜間の治安維持をはかるとともに、夜市を開いて、夜の賑わいをアピールする。また市中央図書館からチャイナ・タウンにいたる通りに「シルク・ロード」の幟をたて、歴史的・魅力的な観光地区としてのチャイナ・タウンへ人々をいざなう目印としている。シルク・ロードは東西を結ぶ道であり、バンクーバーでは、東洋=チャイナ・タウンと西=西洋人の街をつなぐ通りとしての意味を込めたとの越棠氏の説明が印象的であった。
|
|
|
| 【戻る】 |
|
|
| 【PERINETホームページ】【PERINET企画サイト】 |
|
webmaster
Copyright(C)2002 PERI |
|