龍井茶について

曽慕蓮(元・山西師範大学)

イラスト/浅山友貴  訳/豆彩編集部

 中国に旅行したことのある人ならこの言葉を聞いたことがあるでしょう―「上有天堂、下有蘇杭」、蘇州・杭州の優美な風景と人文の粋を集めた様は地上の楽園と呼ぶのにふさわしい。その杭州を訪ねる観光客はどんな名産品を買うのでしょう? 杭州シルク、《張小泉》のはさみ、西湖のジュンサイ、臨安山のクルミなど。けれどもまず龍井茶でしょう。
 龍井茶はなぜこれほど名が知られ、求められるのでしょうか? 清朝乾隆帝が大変に好んで、龍井村にある18本の茶樹を「皇帝の木」とし龍井茶を献上茶と定めたからとも、あるいは今日の国家指導者たちが賓客をもてなし贈る「国茶」だから、ともいわれます。しかしながら最も根本的な理由は龍井茶のたぐいなきその品質にあるのです。龍井茶は「四絶」(四つが絶品)と称えられます、つまり「色が艶があって鮮やかな緑、香りが高く芳しい、味が甘くこくがある、形が美しい」。まさに〈世界銘茶王国の緑の皇后〉と呼んで過言ではありません。
 「龍井」は茶名でまた茶樹の品種、土地・寺・泉の名でもあります。もともとは泉があって寺を建て、寺の僧が茶を栽培したので、名の由来は泉と寺なのですが、今では茶の方が有名ですね。
 龍井茶は産地から獅(峰)、龍(井)、虎()、雲(棲)、梅(塢)に分けられ、中でも「獅峰」は質が高く、玄米色がかった浅緑色と馥郁とした香りが長続きするのが特徴です。「梅塢」はその光沢のある緑色と爽やかな香り、製茶がていねいで形が美しく好まれます。この5種の龍井茶を〈西湖龍井茶〉と総称していて、その茶園面積は約6百ヘクタール、年産5百トンほどあります。
 龍井茶は茶摘み時期から(清)明前と(穀)雨前に採取加工したものが最上とされます。極上品の〈明前龍井〉1キログラムには手摘み8万枚もの柔らかな芽葉が必要です。いかに龍井茶が珍重されるかわかるでしょう。人が手作業で煎るその製茶には、独特の技術―掻く、打ち振る、包む、つぶす、押さえる、たたく、圧する、など10種の作業があり、龍井茶1キログラムを製茶するのに8時間ほどかかるのです。
 龍井茶の「四絶」を存分に味わおうとするなら、上品で快い場所で、茶葉は正統〈西湖龍井茶〉(とりわけ〈明前龍井茶〉など)を選び、きれいで澄んだ水を用意して、上品な茶道具(青花や青磁の茶杯・蓋碗またはガラスのコップなど)を使い、湯を沸かす・茶葉を入れる・湯を注ぐ・お茶を注ぐ・味わうなどの動作を規範通り行うことです。
 龍井茶は柔らかい芽葉にこの土壌と気候の栄養分を蓄え、煎ることでその有効成分を最大限に保っています。龍井茶を飲むことで人生を楽しみ情趣を涵養するだけでなく、体が健康になるのです。
 3月下旬、茶園では茶摘みと明前茶の製茶が始まります。この〈緑の皇后〉のすばらしい風味をいっしょに味わいましょう!

【戻る】


【PERINETホームページ】【PERINET企画サイト】


webmaster
Copyright(C)2002 PERI