蘇東坡と杭州(2)

曽慕蓮(元・山西師範大学)

イラスト/浅山友貴  訳/豆彩編集部

 およそ千年前、北宋時代の政治家・蘇軾は東坡居士と号しました。「蘇東坡」として有名ですね。政治家でありながら詩人、散文家、書画家でもありました。父・蘇洵、弟・蘇轍とあわせて〈三蘇〉とよばれ、この3人はいずれも、唐代・宋代の代表的な8人の文章家をさす〈唐宋八大家〉の1人です。

 蘇東坡は王安石の新法に反対して左遷され諸州の地方官を歴任しましたが、赴任地の1つ杭州の人々は、知州として赴任してきた蘇東坡を今にいたるも敬慕し、【蘇東坡記念館】を造って忘れないでいるのです。

 彼は自身を杭州人と見ています。
  居杭積五歳 自憶本杭人
   杭州に居を構えて5年、自分は杭州人だと思っている

 蘇東坡は杭州、特に西湖を深く愛しました。彼が生涯に作った詩のうち、西湖に関係する現存の詩は453首にものぼります。

 彼が西湖を賛美した詩のなかで最もよく知られている七言絶句を紹介しましょう。

【飲湖上初晴後雨 二首其二】
 水光瀲 晴方好 
 山色空濛雨亦奇
 欲把西湖比西子 
 淡粧濃抹総相宜

こじょうにいんす はじめはれのちあめふる
すいこうれんえんとして はれてまさによし
さんしょくくうもうとして あめもまたきなり
せいこをとって せいしにひせんとほっすれば
たんしょう のうまつ すべてあいよろし



 【西湖上で酒を飲む
    初めは晴れていて後は雨になった】

水の光はきらきらと輝き
  晴れてこそ実に美しい 
山の色あいは空濛ともやがかかり
  雨の降るのもまた見事 
西湖を美女西施にたとえるなら
薄化粧も濃い化粧もどちらも美しい

 彼は西湖を、この地出身の「傾城の美女・西施」にたとえたのです。晴れた日の西湖を丹念に化粧し盛装した西施に、雨の日の西湖は薄化粧の西施にたとえました。晴れの日はもちろん、雨の日もまた思いもよらず、風情がある…、西湖の気品ある美しさを余すところなく言い表しています。
 
 為官一任 造福一方
   任官したからには民を幸せにする

 蘇東坡は杭州で官職に就いていた5年の間に善行を行い、杭州の人々はそれゆえ世々代々彼のことを忘れないのです。 中国の民衆は善良で容易に満足しますから、民のために尽くし、良い行いをするだけで、子々孫々その人のことを覚えていてくれるのです。私たちはここから示唆を受けることができるでしょう。

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