「麻」ってなに?
「辣」ってなに?
「麻」はしびれる、「辣」は辛い、
の意味。
「麻辣」とは、
まさに「舌がしびれるような辛み」をいいます。
いま、この「麻辣」に熱い視線!

 おなじみの香味、ネギ・ニンニク・ショウガやカラシ・ワサビにも辛みの刺激がありますね。辛みは食欲を刺激し料理の味を深めます。
 サンショウのしびれる刺激が「麻」の味、トウガラシやコショウのひりひりと熱い辛さが「辣」の味です。2つの辛みを使い分け組み合わせ、そこに甘みや酸味・塩味を加えて「中国料理の辛みの味」が完成。
 サンショウ「花椒」とトウガラシ「辣椒」とコショウ「胡椒」を総称して「三椒」といいます。これが中国料理の辛みを作る代表的スパイス。
 この「三椒」に注目!


〈花椒〉
日本産より小ぶりで香りや辛みが強い。四川省産が良質で名高い。《麻婆豆腐》には欠かせない
花椒 サンショウ

 秋、完熟実のはぜた果皮だけを収穫して乾燥、色や形が花に似ているのでこの名が付けられたとか。
 「花椒」は古く紀元前の昔から使われているそうで、基本的には粒のまま使いますが、すりつぶして粉末にした〈花椒粉〉、香りを油に移した〈花椒油〉でも使います。炒った塩と合わせて〈花椒塩〉に、そして〈五香粉〉にも入っていますよ。
 日本でもサンショウが採れますが、品種が異なり中国料理に代用できません。

辣椒 トウガラシ

 トウガラシは中南米原産。食用・調味料として世界中で栽培されている作物。もっとも辛い品種の一つ〈ハバネロ〉から甘みのあるピーマンまで、トウガラシの品種は環境と土によりさまざまで、一般的に「小さいものほど、とがったものほど辛い!」。日本産トウガラシ〈鷹の爪〉は辛みの強い品種の一つです。
 緑色と赤色は未熟か完熟かの違いで、乾燥トウガラシの深紅の色は収穫時に十分熟していることが条件です。
 中国産トウガラシ「辣椒」は中国料理に辛みを出す素材の代表ですが、その歴史は意外に浅く、清代の半ば以降に使われ始めたといいます。地方によりトウガラシの大きさ・形状・辛みはさまざまです。四川省産が良質で特に〈朝天椒〉が有名、河北省・雲南省でも良質のものが栽培されます。
 トウガラシは生や乾燥物を使うほか、油に辛みを移した〈辣油〉、トウガラシを長期間塩漬けにし麹や香辛料を加えて発酵させたチリソース〈辣椒醤〉、またソラマメを発酵させ香辛料・トウガラシを加えた〈豆瓣(辣)醤〉、そして〈XO醤〉、などなど、トウガラシの辛みを生かした調味料は多彩です。四川料理は特にこのトウガラシの使い方が絶妙で、この地にはトウガラシを塩水に漬けて乳酸発酵させた食品〈泡辣椒〉もあります。
 生ものと乾燥ものと発酵させたそれぞれのトウガラシを組み合わせて複雑な辛みを出したり、また、他の辛み・味・香りと重ねれば、より複雑で熟成した味わいが得られます。
 トウガラシはその辛み主成分カプサイシンが体脂肪代謝を促進することが知られて、近年は「トウガラシは健康にいい」というイメージも定着してきました。
 日本へのトウガラシの輸入は年に約1万トン、そのうち93%が中国からで、日本国内産は総消費量の1%未満です(03年)。

〈朝天椒〉
中国産の高級品種。ほおずきのような形で、辛みが強いだけでなくその中に香りとうまみが調和している
〈韓国産トウガラシ〉
まろやかな辛みとふくよかな甘みがある
〈泡辣椒 パオラージァオ〉 トウガラシの辛み成分カプサイシンがあるのは「ワタ」のところ。ピーマンに含有なし
耀盛號の〈豆瓣醤 トウバンジャン〉
台湾で製造、ビン詰めしたものを輸入
珠江飯店・菜香新館オリジナル
〈XO醤 エックスオージャン〉
火腿(金華ハム)・カイバシラ・干しエビ・ニンニク・トウガラシなどで作る調味料。「XO醤」とは「究極の醤(みそ)」という意味
珠江飯店・菜香新館オリジナル
〈豆瓣醤 トウバンジャン〉
チリソース
〈辣椒醤 ラージァオジャン〉
《乾焼明蝦(エビのチリソース煮)》でおなじみの味
イラスト/佐々木千佳子

胡椒 コショウ

 さわやかな芳香とピリッとした辛みが特徴のコショウの原産地はインド、肉の臭みを消し防腐効果も期待され、古くから使われています。
 黒・白のコショウは同じ植物から作られ、ただ作り方が違うだけ。黒コショウは熟す前に収穫し外皮が黒く変わるまで天日に当てたもので辛み成分が多く、一方、白コショウは完熟果を収穫し水に浸し外皮を取り除いて乾燥させたもので辛みは穏やか。
 中国には1500年ほど前、仏教とともにインドからシルクロードを通って伝えられたといわれ、それで「胡」の字が付いている!
 主に粉末で使用。酸っぱく辛いスープ《酸辣湯》はコショウをかなり利かせた味。

「辛み」の好みが違います
「四川の人はピリッとした辛みを好む」のはトウガラシが渡来する以前から。蒸し暑い四川省の料理は辛みもより強くはっきりしていて、食べるとすぐに強烈な辛みを感じる…のがお好み。一方隣の陝西省では香辛料の香りを大切にし、最初はあまり辛みを感じず食べ進めるうちに辛みを感じるようなスパイスの使い方が好き、とか。
地方によって辛みに対する好みが違います。

「辛み」の感じ方が違います
物を食べて感じる味覚(甘い・酸っぱい・しおからい・苦い・うまい)は舌で感じますが、「辛み」を感じるのは舌ではない! カラシ・ワサビの辛みは揮発性の辛み成分が鼻を抜け粘膜を刺激することで感じ、サンショウやトウガラシの辛みは、成分が人体の痛点を刺激して「痛み」として感じます。




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