| 今より楽しくあの世を生きよう 1 福原庸子(横浜ユーラシア文化館) |
美中生韻 |
| おいしい食べ物と飲み物、ゲームと美しい椅子、おしゃれなアクセサリー、化粧品や薬もあります。いったい誰がどこに行く準備でしょう?ピクニック?いいえ、戦車まで持っていくようです。なんと、古代エジプトの若き王ツタンカーメン(在位前1347〜1338ころ)があの世に行く準備です。 古代中国でも死後の世界への旅立ちはこの世以上に華やかなものでした。湖南省長沙市馬王堆で1972年に発見された前漢初期の墓(前2世紀)の中には、2千年以上も前に亡くなった女性が皮膚に弾力を残したまま眠っていました(湿屍)。彼女のために揃えられた品々は、食べ物、薬、装身具に楽器、漆の食器や調度品、そして絹や錦です。 古代エジプトでも中国でも、なぜ死んでしまった者のためにぜいたくな仕度をする必要があったのでしょうか。 それは、死は全ての終わりではなく、あの世で楽しく生きるための始まりだと考えられていたからです。そこで死者の霊があの世で何不自由なく暮らせるように調度品や食べ物を副葬しました。 しかし、まず忘れてならないのは、体が朽ち果てないように保存してあげることです。古代エジプト人は、死後も現世に残した自分の体を通してお供え物のパンやビールなどを手に入れると考えたのです。遺体が朽ち果ててしまったら飲食は不可能、来世への復活もできません。そこで、腐りやすい内臓を取り除いてから遺体を乾燥、殺菌、お守りなども包帯に巻き込んで、入念なミイラ作りを行いました。 旅立ちの前に死者を待つのは生前の行いに対する神々の裁きです。うそをつくと傾いてしまう天秤にかけられ告白したのは心臓です。記憶は脳ではなく心臓が留めていると考えられていたのです。天秤から転げ落ちたらそばに控えた怪物に食べられてしまうのですが、心臓が余計なことをしゃべらないようにする呪文もありましたのでご安心を。 この審判を無事通過すれば天国(「イアルの野」とよばれた)での至福の日々が待っているのです。 次回は古代中国のお墓に入ります。
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