チアン/熱くあえる

 初めてこれを見たのは、寮に住む友だちの部屋だった。彼女は蒸した魚に醤油や黒酢、白髪ネギをのせ、そこに熱したゴマ油をじゅっとかけ「 qiang」したのだ。最初はぎょっとしたが、一瞬、小さくはぜ、すぐにしゅんとおさまる。すると、たちまちネギの香りがふわっと立って、蒸し魚はつやつやと輝いたのだった。

 油をかけるといっても、魚は蒸してあり、たっぷりと水分を含んでいるので、とてもさっぱりしている。それでいてコクも出て、ネギの甘いこと。このネギだけでも、ご飯が食べられそうなほどおいしい。

 熱々に蒸したほたて貝や海老、ゆでた野菜などにも、この料理法はぴったりだ。温かい具材にドレッシングをかけると冷めてしまいがちだが、この方法はあまり冷たくならずにすみ、何よりゴマ油の香りがすばらしい。

 白身魚の薄作りを並べ、レタスやクレソン、赤ピーマンの千切り、白髪ネギ、砕いたナッツなど香ばしいものを添え、そこに黒酢や醤油、そして熱々のゴマ油をちょっとかけると、中華風のお刺身になり、刺身が苦手な中国の友だちでも食べられる。ニョックマムまたはナンプラーという魚醤、砂糖と酢、唐がらしを混ぜたソースを具材にかけておくと、東南アジア風。熱したゴマ油にサンショや、豆板醤を入れると、ピリっとした味になる。このやり方は、素材の味を生かしながらも、香りとコクをプラスしてくれる。

〈浅山友貴〉

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