
| 京劇は娯楽、つまりエンターテインメント、楽しむもの。京劇にはオペラやミュージカル、コント、サーカス、あらゆるエンターテインメントの要素が盛り込まれています。 そもそも京劇以前の伝統劇は、宗教や道徳等を広める役割をし、後には地域の瓦版、すなわち役人のゴシップなんかもありました。京劇はその流れを汲んで近代に発展を遂げます。京劇の黄金期は20世紀初頭、梅蘭芳などの名優やスターが排出しました。 京劇黄金期には「四大名旦」と称された4人のスター女形がおり、それぞれが「自分だけの芸」で舞台に立ち喝采を得ました。一人は自分の得意芸に合った新編劇の製作に打ち込み、一人は自分の声の質に合った悲劇物を演じ、一人は「唱」(歌の演技術)では上の二人にかなわないので、世話物のオキャンな少女を演じることで客の支持を得、また一人は殺陣俳優から女形に変更して、体を使った女将軍や女傑を演じました。それぞれ人と違うイロイロな形で京劇を演じ、客を楽しませたのですね。他の俳優も「唱」に専念したり、立ち回りに固執したり、喜劇を極めたり…、「エロ」もあったそうです。観客を喜ばすために芸域はどんどんと膨れ上がり、京劇は「あらゆるエンターテインメントを集めた芝居」になっていったのです。 日本で京劇公演は、言葉の壁もあり、殺陣芝居や『三国志』『西遊記』等おなじみの物語が多いのですが、それだけでない芝居があります。機会があったら、「おかしみ」のある京劇に足を運んでみてはいかがでしょう。 |
| チャン・チンホイ |
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清朝の歴代皇帝は演劇を好み、地方劇などが発展しました。乾隆帝は1790年80歳の誕生日に各地の劇団を紫禁城に呼び寄せました。1800年ころ、安徽省と湖北省の地方劇が北京でそれぞれ人気を得、次第に融合して京劇(の前身)が生まれます。20世紀初め京劇は黄金時代を迎え、「京劇」の呼称も生まれ、中国を代表する「国劇」になりました。1949年の中華人民共和国建国後には京劇の整理・創作などの改革が国政レベルで行われ、文化大革命が始まるまでの間、京劇はその絶頂期を迎えます。 |
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「浄」(豪傑)の役は、顔にくま取りをする。赤・青・黒色などで顔に化粧するくま取りは、役の性格・出自・運命を暗示する。ある人物のくま取りはその役だけのもので、たとえば関羽役の赤い顔は関羽だけに使われる。 |
![]() 《回荊州(荊州に帰る)》河北省楊柳青年画 劉備(中央)が孫権の妹・孫尚香(左)と日を過ごして荊州に帰らないことを憂えた趙雲(右)は、劉備を訪ね「曹操が荊州に攻めてきた」とうその報告をし、驚く劉備のそでを引いて連れ帰ろうとする、緊迫した『三国演義』の一場面。 この劇は一名《龍鳳呈祥》、生・旦・浄・丑の役柄がある大作で、吉祥慶事を内容とする。 『戯齣年画(下)』漢声雑誌社1990年 |
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| 役柄は「生」「旦」「浄」「丑」に大きく分類され、発声法・演技の様式・化粧・衣装にそれぞれ決まりごとがある。俳優は原則的に一つの役を一生続ける。 | ||
| 生ション 旦ダン 浄ジン 丑チョウ |
ヒーロー。男性役。 年齢や性格によって老生・小生・武生他にわけられる。 ヒロイン。女性役。 年齢や性格によって青衣・武旦・老旦・花旦他にわけられる。 豪傑など個性的な男性の役。 顔にくま取りを描く。 コミカルな道化役。 顔の中央を白く塗ることが多い。文・武にわけられる。 |
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| 「京劇は耳で聴くもの」といい、「観劇」を中国語で「聴戯」、「劇を演ずる」を「唱戯」というくらい、京劇では歌が最重要。 | |
| 唱チャン 念ニェン 做ツォ 打ダァ |
心情や情景を歌う技術。 発声法は役柄により異なる。 せりふの技術。 仕草・動作・所作。 戦闘場面などの立ち回り。 武術・雑技がもとになる。 |
| 参考:『京劇―「政治の国」の俳優群像』加藤徹・著、中公叢書2002年 剪紙:『中国戯曲臉譜剪紙―三国演義』 |

| 《鬧天宮(孫悟空天界を騒がす)》 天界の桃園で孫悟空は、食べると神通力が身に付く桃を食べようとして土地神にたしなめられます。その桃は西王母の誕生を祝う「蟠桃会(ばんとうかい)」で出される物で、会に招待されていないことを知って孫悟空は暴れ出します。 孫悟空を石山雄太さん、土地神をチャン・チンホイさんが演じます。 |
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チャン・チンホイ さん 幼いころから舞台芸能に興味があり、「中国語の話せる芸人―チャン・チンホイになりたい」と思ったチャンさん。その言のとおり中国語を学び、北京に留学して京劇俳優に弟子入り。現在、「丑」のこっけいな役柄で在日京劇団の舞台に立ち、また京劇をレクチャーする。「京劇は、深いので出られなくなり、今はライフワークも含めて取り組んでいます。」 |
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石山 雄太 さん 中国京劇界史上初の外国人俳優。中国京劇院所属。小学生の時、京劇《孫悟空》を見て、将来京劇の舞台に立つことを夢見る。チャン・チンホイさんとは、「京劇研究会」で知り合って以来15年ほどの付き合い。7面「中華街でニイハオ」に石山さんのインタビューを掲載しています。 |
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