天津の春節

李 佳節 (横浜国立大学留学生)

 私は中国の天津で生まれ、育ちました。天津といえば、おいしい「狗不理まんじゅう」をはじめ、高い天津タワーを頭に浮かべるでしょう。しかし私にとって、1年1度の「天津の春節」は何よりも忘れられない天津のシンボルだと思っています。なぜなら、中国全土が西洋化している中、天津は相変わらず伝統的な春節の過ごし方を守っているからです。

  「春節」は旧暦1月1日のことですから、今年は2月7日です。しかし、いろんな行事はお正月の1週間前くらいから始まり、旧暦1月15日の元宵節まで続きます。そのうち、「年味」がもっとも強いのはもちろん、大晦日です。

 大晦日当日の一大事は「貼春聯」、春聯を貼ることです。春聯とは、紅色の紙に「万事如意(全てうまくいきますように)」や「恭喜発財(お金持ちになれますように)」と書いた、おめでたい対句です。新たな1年がよい年になりますようにと、みんな願いながら、ピカピカに拭いてある門や入口の戸に貼っていきます。この神聖な行事は毎年欠かせない、春節の恒例です。

  大晦日を自分のうちで過ごす人は少ないでしょう。親戚集まって、一家団らんで年越しするのが一般的ですが、それもまた壮大な場面になります。2、30人は1つの部屋に集まり、1年間の出来事を報告しあったり、国民的ゲームの麻雀に夢中になったり、テレビの「春節聯歓晩会」(春節の定番番組、日本の紅白歌合戦に似ている)に歓声をあげたりとか、とてもにぎやかです。年越しのごちそう「年夜飯」に舌つづみを打ったあと、全員、零下7、8度の外へ出かけます。大晦日の夜、街を歩いてみると、普段は見られない景色が目に入ってきます。赤い切り紙を映したせいか、どの家も暖かいオレンジ色の光がついて、見るだけでほっとします。目的地の広場に着いたら、もうすでに待っている人が見えます。ちょうど11時、ドーンと大きな音や人々の歓声を伴って、きれいな花火が打ち上げられます。花火の光がみんなの顔に映って、柔らかい微笑みが浮かんでいます。いろいろな形で夜空を飾る花火は神様へのメッセージだといわれ、打ち上げた花火とともに、みんなの新たな1年への願いも一緒に神様のところに届きます。少し広い通りや空き地でも、花火を上げる人がいます。ここに、日本人は違和感を感じるでしょうか? そう、中国では春節のお祝いとして花火大会をやります。日本では、花火は夏を象徴しますが、中国人のイメージでは、花火は冬のもの、国慶節や春節など重要な祝日にしか見られないものです。天津の夜はとても寒くて、外でジッと立っていることはできません。しかし、体が震えながら暖かい光を発する花火を鑑賞するのは、天津流です。30分間体と戦い、元気付けてもらった人々は満面の笑みを浮かべ、家へ、そして新年に向かっていきます。

 「新年快楽!」今年もよいお年を。。。


 イラスト/浅山友貴

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