テレフォン 

【陸汝富(北京放送)】


イラスト/浅山友貴

 2月に入れば日本ではお正月気分も薄れ、とっくに緊張した生活に戻っていることであろう。ところが北京はこれからピークを迎える。5日の春節(旧暦の元旦)から20日の元宵節(旧暦の正月15日)まで、仕事もろくに手につかないお祭り気分に浸る。商店、特に飲食店はどこもかしこも満員になる。これはこの数年の傾向だが、一家団欒も料理屋で済ませ、できるだけ時間や手間を省くようになってきている。
 さて、北京に電話が普及し始めたのはこの10年のことだ。今でこそどの家にも電話が取り付けられ、ずいぶん便利になったが、10年前は特殊な階層にしかなかった。50年代から80年代の初め、局長クラス以上の役人の家にしか電話はなかった。それが80年代の半ばころから処長クラスにまで普及し、90年代に入ってやっと一般家庭にまで普及した。でも最初のころは電話の取り付けを申請し、手続き料もちゃんと払ってからもなお半年以上は待たされた。その料金も年々うなぎ登りに登り、一時はテレビ一台分もした。今では当時の五分の一程度まで下がり、2台目に取り付ける場合はさらにその半額というサービスぶり、電話は日常の必需品になっている。
 その後を追って現れたのが携帯電話で、北京の町角にちらほら姿を見せ始めたのが今から5、6年前、若者たちの間ではやり始めたのがこの2年ほど前である。はっきりした統計数字は分からないが、友人の話だと、普及率は北京市でも12%くらいではないかと言っているが、私の周囲、特に若者の間では5人に1人は持っている。最近は携帯電話本体と加入手続き料がまた大幅に値下げして、普及のテンポを速めている。が、今一つ発展を妨げている問題がある。今北京では携帯電話はかけても受けても受信料が取られることである。つまり、電話料金を節約しようとしても、悲しいかな自分でそれをコントロールできないのだ。携帯電話の通話料金は普通の電話より倍以上も高い。そんなわけで、こっちの方も、相手に迷惑がかかるのを懸念して、よほどのことがない限り遠慮してしまう。
 現行の料金徴収については、賛否両論真っ二つに割れ、一時は一方料金の徴収に傾き、年内には解決されるようなことを言ってメーカーを喜ばせたが、結局は関係部門が頑なに首を縦に振らず、新年を迎えた今もずっと棚上げになっている。
 電話の話のついでに、触れておこう。北京の街角に電話ボックスが急激に増えた。どこへ行ってもいろいろな形をした電話ボックスが目にとまる。一見してずいぶん便利になったと思うが、私のような外で電話する機会の少ない者にとってはたいして役に立たない。どの電話ボックスもみなICカードというテレフォンカードしか使えない電話で、コインが使える電話ボックスが一つもないからである。北京を訪れる観光客にとっても不便だと思う。

         


目次ページへ戻る

横浜中華街
おいしさネットワーク
御意見御要望は
こちらへ  
お願い致します
©おいしさネットワーク