北京ペット事情

【小堀雅子(北京外国語大学・留学生)】


イラスト/浅山友貴




中国で最もポピュラーなペットといえば、金魚と小鳥でしょうか?北京の公園では、毎朝お年寄りたちが鳥かごを下げて集まり、ご自慢の鳥たちの声を競い合っています。
 金魚や小鳥以外にもここ数年ペットとして大人気なのが、ハムスターやウサギ、猫などの小動物です。ペット市場ではこれらの動物たちが売られていますが、不思議なのは日本でペットの代表格である犬をほとんど見かけないことです。なぜなら北京の住宅事情を考え、犬を飼うことが制限されているからです。
 北京市内では小型犬を飼うことは許されていますが、大型犬を飼うことは禁止されています。小型犬を飼う場合でも公安局に届けを出さなくてはならず、また、登録料として毎年数千元のお金を支払う義務があります。そのほかにも場所によっては犬の散歩時間も夜の8時から翌朝の7時までと規制されており、違反した場合は罰金が課せられます。

 原則として犬の売買も禁止されています。けれどもペット市場をぶらぶらしていますと、「犬、要りませんか?」と声をかけられ、ちょっと興味のある様子を見せますと、おもむろに上着の胸元からかわいらしい子犬の顔をちらつかせます。
 日本では、片手にビニール袋と小さなスコップを持ち犬の散歩をする人の姿をよく目にしますが、北京でその姿を見かけることは滅多にありません。今北京ではこのような厳しい条件をクリアーして、堂々と犬を散歩させて歩くことは、一種のステイタスとなっています。
 北京市内では犬を飼うことが厳しく制限されていますが、北京郊外の農村などでは番犬として大型犬を飼っている家が多いようです。
 北京の北東部にあります平谷県に住む、高さんという男性は犬が大好きで、半年前友人から一匹の子犬を譲ってもらいました。犬が大好きな高さんは子犬をとてもかわいがり、子犬は日に日に大きくなっていきました。
その後子犬に小さな変化が現れました。大きくなるにつれて子犬は少しずつ狼に似てきたのです。
 けれども高さんはかえって喜びました。狼に似た犬だったら番犬にはうってつけです。と、ここまではよかったのですが、子犬はその後ますます大きくなり、鋭い犬歯が生え、瞳には強暴な野生の光がちらつくようになりました。どんどん野性味を帯びていく子犬はとうとう高さんの手には負えなくなってしまい、高さんは仕方なく鉄の檻を作って子犬をその中に閉じ込めてしまいました。それから野生動物を保護する施設に連絡し、その子犬を引き取ってもらいました。保護施設の人の話によりますと、その子犬はやはり狼だったということです。犬も狼も小さな時は見分けがつきませんから、高さんに子犬を譲った友人も、まさかそれが狼の子供だとは知らなかったのでしょう。鶴の恩返しという話がありますが、いつの日かこの高さんに育てられた狼は恩返しにやってくるのでしょうか。もし、夜中に突然恩返しにやってこられたら、怖いですね。高さん曰く恩返しなんて気にしなくていいから、自然の中で元気に暮らしてほしいというところでしょうか。

         


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