(No.21-2000.6)【曽徳深】


 テレビ番組「私達の留学生生活・小さな留学生」を見る。5月5日夜、外出から帰ると、家族が食卓を囲みながら、はしを動かすのを忘れてじーっと見入っている。日本の大学を卒業して職を得た父親と一緒に暮らすため、小学3年生9歳の女の子張素が母親と北京から日本に来る。1年半後、不況により父親が勤める会社が倒産して、やむを得ず母子2人がまた北京に戻っていく間の、張素の学校生活を中心に、家族を描いたドキュメンタリーである。「私達の留学生生活」は、日本での中国人留学生を描いた中国国内向けのシリーズである。
 石原東京都知事の「三国人」発言と、その後の世論調査で都知事が七割の支持を受けている(三国人発言そのものでなく都政全般に対するものと思いたいが……)のを知って暗然としていた時だけに、「小さな留学生」は一条の光をともしてくれた。
 張素は、日本についた翌日すぐに八王子第七小学校3年に中途入学する。ものおじしない子であるが、担任の福原先生の日本語授業が一言も理解できず、休憩時間に、見る見るうち大きな目から涙があふれる、心配顔で囲む同級生たち。翌日から、近所の同級生が迎えにくる、毎日一緒に登校する。学校は張素一人のために通訳をつける。家庭では、父親が会社から帰宅後、家族そろって日本語の勉強。張素の日本語は短期間で上達し、学校生活にとけ込んでいく。外国人の子供を受け入れる学校の温かい心と家族の絆が張素を育てる。心に国境を持たない同級生が張素を包む。日本の庶民のなかに国際化の種がまかれる。


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