北京の10月
高喜美
(元・北京第二外国語学院)


イラスト/浅山友貴





 北京の10月 北京の10月は国慶節、新中国誕生記念日から始まる。この大事な祝日を10月1日に決めたのも、首都北京での祝賀行事を考慮の上、北京の一番いい気候の秋を選んで決めたと伝えられている。節日の公休も土、日の休みを前と後の週から借りてきて丸一週間の休みをくれる(休み明けの次の週は丸七日の連続出勤通学)。北京の秋は朝晩セーターを着込むぐらい冷えるが昼間は「秋高気爽」さわやかな時季、遠くは旅行、ピクニックに、近くは公園、博物館回りと出かけるのにもってこいだ。
 また祝祭日になると北京は外地からの上京車を制限するので車は少なくなり、道路も広くなり?10月の北京は空まで澄み渡りまさに紺碧の空。もしこの時季に天壇公園に行き、白い大理石造りの三段の壇上にすっくと建つ三重の円い屋根をもつ瑠璃瓦(るりがわら)ぶきの古代建築、祈年殿を仰ぎ見れば、天高く馬肥ゆる秋―なるほど秋は天が高いのだと分かるだろう。
 祝祭日の休暇が今年から長くなった。レジャー向けの方針で、国民の国内消費向上をめざす措置なのだろう。メーデーの休みも今年初めて一週間に変わったのだが、万里の長城などは上京の観光客で超満員、観光バスは地元で行列、午後五時になっても客は長城に登れなかったとか。北京だけでなく各地の有名な観光地もパンク状態だったそうな。そこでマスコミは観光地区のお客の受け入れ態勢準備は早々に、大入り時のサービス改善を叫んでいる。雲南・貴州省などは西部開発プロジェクトの一環として新観光地区、その交通をも含む開発を打ち出している。
 10月、国慶節にあやかって結婚式も多い。中国人の吉日は偶数。10月は月も日も偶数、本当に双喜(二重の喜び)でもっといいというわけ。花嫁は結婚の日、午前中に嫁ぎ先の敷居をまたぐ、嫁に行くときは堂々と親元の家から出て行くのがしきたり。で、どんなに近くてもハイヤーで婿さんが迎えに行く、その車に乗るときは爆竹を鳴らし隣近所に知らせる。今北京市内では爆竹禁止。でも人の習わしは恐ろしいもので、爆竹の音を風船玉の破裂でと考え付いた。今爆竹代用の風船は市販されている。そこで婿の迎えの車が着いた知らせとともににぎやかに爆竹代わりの風船玉を潰し鳴らす、人が集まってくる。その中を花嫁は車に乗り、嫁いで行く。今、北京郊外は別として市内では直接料理屋で披露をするのがほとんどだ。赤い風船かリボンを飾ったハイヤーを先頭にタクシー、ライトバンなど車を連ねて走る光景、これも結婚式の多い北京10月の町の風景の一つだろう。親の世代は勤め先の同僚を呼び、皆が集まったところで親の前で上司の立ち会いのもと式を挙げ、喜糖つまり飴とお茶を振る舞う程度だった。それでも、どう結ばれたのか、恋愛史を詳しく話せとかわいわいけっこうにぎやかだった。 今でも簡素に結婚する人はごく内輪、親戚だけを呼び簡単な披露宴、あとは小袋の飴を配り結婚したことを告げて回る。イラスト/浅山友貴

  
         


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