中国語映画の精鋭




写真:カンヌにて、陳凱歌夫妻(左)と鞏俐夫妻(右) 大衆電影・1999年第8期
中国映画の現在
張頤武・戴蔚然(東京大学)

 1980年代後半に入ると、かつて中国大陸に巨大な影響力を持っていた映画は、一夜にして跡形もなく消えてしまったかのようだ。毎年数多くの映画が慌ただしく登場しては、世に出回る前に消えていった。しかも香港、台湾の映画産業までもが「縮小」と「不景気」に陥ってしまった。
 張芸謀、陳凱歌、李安(台湾)、王家衛(香港)はこの「不景気」な中国語映画界の中で最も知られた名前である。1987年に張芸謀が監督した『紅高粱(紅いコーリャン)』はベルリン映画祭でグランプリを受賞した。これは国際映画祭が注目した初めての中国語映画である。彼の映画は今年の最新作『我的父親母親』に至るまで、ほとんど全ての作品が世界の映画祭と興行収入の両方ですばらしい成績を収めている。深く哲理を探究した初期の作品から、現在の簡潔にして精巧なストーリー描写に至るまで、張芸謀は中国大陸の商業映画の最先端をリードしている。
 中国では、陳凱歌と張芸謀は同時期に現れた映画界の新旗手として、しばしば比較される。1993年陳凱歌が監督した『覇王別姫(さらば、わが愛)』はカンヌ映画祭でパルムドール賞に輝いた。これは今までに賞を受けたいくつかの中国語映画作品の中でも最高位のものである。しかし最近の陳凱歌は芸術性探究の深みにはまってしまったようである。1998年巨額の制作費を注ぎ込んで撮影された『荊軻刺秦王(始皇帝暗殺)』は、テーマが奥深くて広すぎ、またストーリーが冗長で重苦しい、と指摘されており、興行収入も思ったほどよくなかった。これは張芸謀の簡潔で精巧なストーリーとの明らかな違いである。今後この二人の対決がどう展開していくかは不明である。
 台湾出身の李安は現在ハリウッドで活躍している。中国語映画の代表作『飲食男女』は一人の老人の孤独を描き、アメリカ映画での代表作『理智与情感(SENSE AND SENSIBILITY)』は19世紀イギリスの荘園の娘のラブストーリーを描いている。李安をみると、映画監督に最も重要なものとは人間に対する鋭い感性ではないかと思う。これは文化の差異を超えたものである。
 香港の監督王家衛は『重慶森林(恋する惑星)』『東邪西毒(楽園の瑕)』等の作品で有名である。今年の『花様年華』もカンヌ映画祭で受賞した。彼の作風は前衛的でありながら商業性もあり、都会の中産階級の人々に最も人気がある。これら4人の監督は現在中国語映画界で最も注目される人たちである。将来更にどんな人が加わってくるのか、期待して待ちたい。(原文中国語)


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