(No.1-9704)
  「オーケストラは、単一民族でやると、真剣に陰険になりやすい。不自由な言葉で和気あいあいとやる方が、いい音楽ができる。」
  (指揮者 岩城宏之 91・12・7)

 香港島にある日本人学校は、小・中学生合わせて計2200人を超えた五年前から計画してきた新校舎が、海を隔てた新界に完成し、この春から香港日本人学校大埔校として開校する。そこには、現地の子供たちも受け入れる国際学級を併設し、英会話などで交流を図り、現地に開かれた学校をめざす、という記事を香港からの帰りの機中で見た。
 外国にあって自国の文化を子供たちに伝えるのは生易しいものではない。先進国に赴任した人は、子供を現地の学校に入れたがり、発展途上国ではどちらかというと、日本人学校に入れるという。ここにひとつの価値観が働いていると思うが、民族文化に優劣高低をつけるのに果たして意味があるのだろうか?ちょうど、和食・洋食・中華料理に優劣評価するようなものではないだろうか?
 「三つ子の魂百まで」ということわざがあるように、幼少時の成育環境は人間形成に大きな意味をもつ。国際化の時代にあって、自分の座標軸(アイデンティティー)を定めるのに、多感な青少年期の異文化体験は、いい意味の触媒作用を果たすはずである。
 横浜に眼を転じると、由緒あるセント・ジョセフ・スクールが廃校の危機に頻しているという。この10年の間に、居住外国人数が倍に増えたというのに、インターナショナル・スクールの灯がひとつ消えようとしている。原因は単純でない様だが、国際文化都市の横浜としては寂しい限りである。


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