| 世界の街角で さすが香港、独自の合理性で台風のニーズにも応える。 |
 １年前、Ｒ叔父と仕事で香港に行った時の話でＲ…。 出発当日…いつものように、機内はたくさんの観光客でにぎわっていた。出発から２時間経つと機内アナウンスが流れ…「もうすぐ香港だ」と思いきや、香港に台風が接近しているという。うっそ〜、信じられないほど外はばかっ晴れなのに…（どうも雲の上までは台風も来ないらしい）。 しばらくすると、飛行機が雲の上で旋回し始めた。なぜなら、私たちよりも前に着くはずの飛行機たちが、台風のためうまく着陸できず、何度もトライしているので、雲の上で旋回しながら順番待ちをするのだ（空の上の「渋滞」のようなもの）。 １時間待ってやっと順番が回ってきた。着陸態勢に入り、高度を落とした瞬間、今までの静けさがウソのように、これでもかというほど機体は上下、左右に激しく揺れ始め、その激しさといったら、着陸する前に空中分解するんじゃないか？と思うほどである。飛行機も強風の中を負けずに着陸しようと頑張ってはみたものの、横風に吹かれて機体はバランスを崩し、グ・イーンと急上昇、それこそ口から胃が出てくるとはまさにコレ（ＦUＪＩＹＡＭＡなんて目じゃない）。にぎわっていたはずの機内は、一転して恐怖の悲鳴のるつぼと化した。 それよりも、その３ヶ月前に起こった名古屋空港での惨事が脳裏に浮かんだ瞬間、全身の毛穴が縮こまったのは私だけではなかっただろう…。 |
まだ終わっちゃいない、再度挑戦する飛行機に祈る思いか、隣にいるおばさんは、前かがみになり手を合わせて拝み始め、何やらブツブツ言っている。後ろにいるおじさんは「おれはまだ死にたくねぇー」と叫び（私も死にたくない）、隣にいるＲ叔父は恐怖のあまりか、ゲラゲラと泣き笑いし、言葉が言葉にならない状態（な〜んだ、普段とあまり変わらないか）。着陸まであと１５分の所にいたはずが、ジェットコースター気分を３回ほど味わい、３時間かかって無事着陸に成功した。その瞬間、機内は拍手喝采である。飛行機から降りる乗客は、まるで４、５０キロの渋滞の中、日帰りスキーから帰ってきたように疲れきっている風貌…。 あとから聞いた話によると１０機ほど着陸にトライしたらしいが、着陸出来ず、来た空路を引き返したり、近くの台湾や韓国に緊急着陸するなど、そうとうなもの。結局私たちの他に無事着陸出来たのは、私たちが乗っていたのと同じ航空会社の「乗って安心、落ちても安心」の？？？だった。 |
翌朝、天気予報を見ると、台風は香港全土を股に掛けて横断中とのこと、テレビで映し出された町中の映像は超〜最悪、看板は落ちるわ、家は崩れるわ、看板の下敷きになって死んだ人もいた（とにかくビックリするほど大きい台風なのだ）。これじゃ今日はどうしたものかと香港在住のＫ伯父へ電話すると「テレビ画面の右横の上に『８』という番号が出ているだろ、今日はどこも休みだから出掛けても無駄だよ」。 なぬっ？そんな数字全く気にしてなかった。どうやらその番号によって、学校から会社、飲食店、交通機関の全てが休みになるという通達みたいなものらしい。連絡簿で回すのが面倒なのか、はたまた連絡のすれ違いで、だれもいない会社へ一人出勤…なんて事にならないためか、それは定かではない。もともと合理的な香港でも、台風に対してここまで合理的に出来ているのかと感心してしまった。また、この『８』という数字の他に『３』『１０』と３つの重度別に分かれている。 『３』台風接近中…というお知らせ。休みにはならない。 『８』台風直撃（中）…会社、学校、飲食店等の休みの通達（免税店と裕華（大型百貨店）だけは営業していたよ）。 『１０』台風直撃（大）…とにかくぜーんぶ休み。バス、地下鉄、免税店、裕華もとにかく全滅だと思ってください。 とにかく、危なくて外には出られない。「道を歩けば看板に当たる」というほど看板がズラリ並んでいるのだから、こんな台風の中、死にに行くようなモノ。「仕方ない、今日一日ホテルで缶詰か」と、ため息まじりに、ホテルのレストランで朝食をとっていた。外は雨風で大荒れ、街路樹は今にも引っこ抜かれそうに傾いている。新聞紙は乱舞し、スーパーのナイロン袋は綿帽子のようにふわふわとされるがまま。そんな荒れ狂う風景を見てふと思った。「『１０』の時が今まで数回あったっていうけど、とにかくどこもお休みで全滅なのだから、その時はホテルも休みになるのかな？」 |
| 不思議…今まで、ホテルが休みになるなんて聞いたことがない。でも、交通機関が全滅なのだから従業員だって出勤することが出来ない、とすれば、その時はやっぱり休みになるのかぁ？う〜、でも宿泊客がいるのだから「本日休業」ってわけにはいかないし…その場で確かめれば解決したものの、疑問を抱きながら１年が過ぎてしまった…。 （七七子） |
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