これはなぜ?

【龍の話(その1)】



中華街で目につく模様はまず、龍。はし袋から食器、装飾まで、龍、龍。龍ってなにもの?龍模様ばかりなのはなぜ?

 中国北京にある明・清時代の宮殿、紫禁城(現在、故宮博物院)に行くと、門、屋根瓦、外階段から、内部は天井、柱、玉座、皇帝の衣類にいたるまで、龍の模様ばかりで驚かされます。龍、龍、龍。

 古代の中国人は自然現象に対する恐れと畏敬の念からさまざまな聖獣を創造しました。龍・鳳凰(ほうおう)・麒麟(きりん)・亀を「四霊」と呼んで尊びました。中でも龍は特別の存在で、宗教信仰の対象として、さまざまな神話が龍と結びつけられています。
 雲を呼び雨を降らせるその霊力から、人々は龍を降雨の神として祭り、あるいは水の支配者、海の神として祭ってきました。
 稲妻や龍巻を龍の姿に見立てます。人々はこの天地を自在に往来する龍を、不老不死を実現する天上世界への乗り物と見なしましたし、また天帝の使いとも考えたのです。
 神である龍の子と自称したのは、漢の初代皇帝劉邦がはじめですが、以後の皇帝も龍を自らに一体化させ、皇帝の権威の象徴としてきました。龍と王朝権力が密になるとその図像の使用には規制がなされていきますが、人々にとって龍が吉祥を意味することに変わりはありませんでした。
 龍はこのようにして宗教・芸術など社会・文化生活に重要な意味をもってきたのです。
 龍は民族のシンボルといってよいでしょう。

 ところで中国の思想によると、天の四方を守る四種の神獣がいるといいます。東南西北を表す色である青赤白黒と結びついた、東の青龍、南の朱雀、西の白虎、北の玄武がそれで、「四神」と呼ばれます。守るべきものの四方にこれを描きますが、横浜中華街の東南西北に置かれる大きな「牌楼(屋根付きの門)」はこの考えに基づいて建てられています。東の牌楼は今は仮門で、地下鉄みなとみらい21線の開通にあわせて改築される予定ですが、きっとそこにも龍の姿が見られることでしょう。


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