金華火腿(きんかホートイ)を訪ねて中国へ  撮影【黎啓榕】


●検査を経て押される「金華火腿」の焼き印

 「金華火腿」って耳にしたことがありますか?

 金華火腿は中国料理、なかでも香港の広東料理には欠かせない食材です。それだけでなく、味作りにおいての基本調味料でもあります。味のベースになる一番だしの上湯(ショントン/上等なスープのこと)の材料としても金華火腿は不可欠。
 昨年から加熱処理したものの輸入が認められ、日本での利用が可能になりました。香港の広東料理に負けない横浜中華街の広東料理はこの金華火腿を使うことによってさらにおいしくなります。
 というわけで金華火腿をご紹介しましょう。

 金華火腿、これは日本では「金華ハム」として一部の人には知られていますが、イタリアのパルマハム、スペインのハモンセラーノと並ぶ世界三大生ハムのひとつといわれるほどの、すぐれた品質を誇る食肉加工品です。


●この写真は、中国での金華火腿料理です。


 中国には、雲南省・宣威(せんい)県の「宣威火腿(雲南ハム)」など、ハムの名産地がほかにもありますが、浙江省金華地区で生産されるこの金華火腿が中国第一級とされ、1915年のパナマの万国商品博覧会で一等に入賞するなど、世界的にも高い評価を得てきました。
 ちなみに火腿は南宋(12世紀)の将軍が戦場に持っていく保存食としてつくらせたといわれ、その切り口が炎のごとく赤く見えたことから「火腿」と名付けられたそうです。日本には中国清朝の時代(17世紀〜20世紀)に入って来たといいます。

 さあ、生産地の中国は上海に近い金華地区を訪ねてみましょう。
 金華火腿になる豚が金華豚。頭部と臀部が黒く、そのほかは白色という独特の姿をしていて、「両頭烏(リャントウウー/両端が黒いという意味)」ともいわれます。そう「豆彩Vol.2」の表紙でご紹介した、あのかわいい豚です。骨は細く、皮は薄く、脂身が少ないという、加工向きの豚で、生後約10か月で70キロ近くになり、製品化されます。


●金華豚

 火腿になるのは後腿のみ。立冬から立春の間に仕込みが行われます。舟山産の天然の海の塩で塩漬けし、発酵させ、天日干しした後、風通しのよい熟成庫で熟成させます。火腿は重ねられ、酸化防止のために油を塗り、定期的に上下を入れ替えます。

●(左)金華豚の天日干し(右)熟成庫(下)熟成度のチェック



 こうして1年近くの時間と90あまりの工程を経て出荷されるわけです。出荷量は年間100万本以上、そのかなりの部分が香港やシンガポールに輸出されているといいます。

 中国料理、なかでも広東料理の、あっさりしているようで味に奥行きのある、あの旨さ、それは金華火腿によって本物になる!

金華火腿席(金華ハムづくし)
以下のメニューは、おいしさネットワークの珠江飯店と菜香新館で、1997年6月1日から7月31日まで、期間限定で、本場杭州の味に香港の厨師がさらに磨きをかけ「金華火腿」づくしのコースを特別にご用意、ご提供したメニューです。




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