世界の街角で−−ベトナム紀行(その3)−−
アオザイワールドへようこそ
(七七子)イラスト会見千春

 ベトナムといえばベトナム料理、すげ笠、不発弾?連想されるものはいろいろ。しかし、なんといっても「アオザイ娘」が一番だ!という男性の声が特に多いだろう…。

 「アオザイ」そのエキゾチックな魅力にだれもがとりこになり、4泊5日の旅の間にも完全にアオザイワールドにはまっていく。なぜ私たちはアオザイに…、またアオザイ娘にコロリといってしまうのか…。

 ベトナムへ行ってまず目に付くのは白いアオザイに身を包んだ女学生、脇腹をチラッと見せるアオザイ姿のウエイトレス、ちょっと高級なベトナムレストランに行けばアオザイ用の帽子もセットで見れる、これがまたかわいい。頭を覆う部分がなく、つばだけをかぶるスタイルで、そのままパリコレにでも出てきそうだ。

そして、なんといってもそのアジアな顔つきに薄化粧、黒い髪、スッと伸びた背筋、その清楚な感じがなんともエキセントリックな雰囲気をかもし出す。
さらに、今までセクシー規準からは対象外的存在だった「脇腹」も、チラッと横から見せられると、またたまらなくセクシーである。そして極め付きがアオザイ娘の7割方が透けていること。首から足の先まで服で覆われているはずが、身体のラインはもとより服の下に身に付けているものまで、さらには「お気に入り」の柄までもが透けて見える。
さらに、赤いアオザイに白い下着を付ける女の子もそう少なくはない。一体どこに目をやればいいのか…と初めは思う。がしかし、その透けていることも旅の間に眼が慣れてしまう。透けているのがアオザイなのか?と錯覚さえ起こしてしまう。
 「隠して見せる」一般の男性ならモヤモヤしても仕方がない、女の私でさえもこのアオザイばかりは、男性の心理を理解できるのだから、セクシーさについて意気投合するのもむろんやむ得ない話である。しかし、ここで間違えてはいけない。
渋谷に行けばアムラーが氾濫しているように、ベトナムに行けば町中にアオザイ娘が氾濫しているわけではない。このアオザイは正装着であるから、主に正月や結婚式のおめでたい席などで着るほか、学生服や銀行などの一般の制服になっている。だから、しかるべき所にしかるべき姿でいるのだ。

 では、アオザイワールドにはまるとどうなるのか…。着せたい、着てみたいという心情から「ぜひうちの娘に」、「ぼくの彼女に」、「自分に」と後先考えずにアオザイを買いに走る(実は私も買いに走った内の一人で、ついでに帽子も持っている)。がしかし、そのお土産のアオザイも日本でお披露目を果たす日がなかなかない。

 なぜ?こんなにも魅せられて買ったアオザイを、パーティーや披露宴、二次会等に着て行かないのか…。私の場合、まず思い出したようにタンスから取り出し、鏡の前で一人ニヤニヤ、これでも飽きたらず親や兄弟に見せ、ここで一言、「透けてるよ」。やっぱり透けているのか…。購入する前にアオザイを試着して分かってはいたものの、それでもなんとか透けないよう下着に工夫すれば大丈夫かな?と期待を胸に購入。しかし、努力も空しくやっぱり透けてしまうのだ。これが私の場合の日本でお披露目できない訳の一つである。

 このアオザイ、スタイルが少しずつ変わってきているという。昔は今のような化繊が主流でなくシルクや綿を使用し、脇の切れ込みも腰からスリットが入っていた。それがどんどん上にあがって、今のような脇腹を見せるスタイルになったという。チャイナドレス同様、アオザイも完全オーダーメイドで、特に若い女性が着ているアオザイは上半身のラインぴったりに作られている。
さらに横から脇腹が見える構造なので、ゆるみきった段々腹がそのままお目見えすることになる。だからアオザイを着用することで身体中に緊張感がはしり、自然と体が肉体を引き締めようとするのだ。さらに決め手になるのは襟。この襟も首に合わせて作られるため、少しでもだらけた姿勢をとると、苦しくて着られない。食事も、Tシャツ気分で背中を丸めて食べようとすれば、襟が首につかえて食べれない。
普段は「食べ物に口をもっていく」だったが、この襟のおかげで自然と背筋が伸び、本来の食事の作法である「食べ物を口に運ぶ」が自然とできてくる。これが習慣づけば、スッと背筋の伸びた凛(りん)としたスタイルをものにできるのだ。いわゆる姿勢を矯正するのに役立つ。日本でも「立てばしゃくやく、座ればぼたん、歩く姿はゆりの花」とうたっているように、どの国も姿勢としぐさを重視している。

 ベトナムで観光客が喜び勇んでアオザイを着ている姿を見かけたが、着るからには姿勢にも気を配って欲しい。やはり、姿勢が悪いと全体的に貧弱に見え、着ている本人に対し抗議でもしたくなるほど不快感を感じる。やはりアオザイはベトナム女性が着るからこそ美しい…のだ。



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