世界の街角で−−HONG KONG 紀行その1−−
香港は変わった?
変えたのは観光客だった!

(七七子)イラスト会見千春


 返還からちょうど5か月経った10月下旬に香港へ出かけた。
 1997年7月1日、香港返還。あの頃なにを思ったか、だれもが「返還される前に香港へ…」、とせっせと足を運び、通常の3倍以上の観光客が香港へ押し寄せた。

 さらに返還ブームに踊らされた哀れな観光客は、最高値のツアーを1年前から予約をし、その1年間は世界中が香港返還ブームだった。

 当時の「香港返還ツアー」は、18万円〜30万円。はなっから行く気がなかった私も、友達の「香港返還の時は休みをとって香港に行くんだ。歴史上に残る劇的瞬間を見に行かなきゃな。」の自慢げなその一言で、実は私も野次馬根性丸出しで、香港返還ツアーに出かけていたのだった。

 格安チケットをなんとか手に入れ、ホテルは私の頼みの綱である香港在住のOおばさんにお願いをし、「いつもは3千円なんだけど、それが返還前だからって1泊5千円なのよ。」というクーラーもシャワーもトイレもついているゲストハウスを予約してもらった。

 そのゲストハウスは、あの九龍のメイン通り、ネーザンロード沿いにある、ハイアット・リージェンシー正面玄関の斜め向かいにあった。まず立地条件は最高だ。部屋は、友達の家に泊まりに来たという感じで、韓国人経営のそのゲストハウスは、もちろん屋内は土足禁止、だから床はいつもピカピカで清潔感が感じられる。クーラーも小さいながらにパワーがあり、トイレもお風呂も特別不快感はない。

 ただ一つ「やられた」と思ったのは香港返還を前に、どこもかしこも5日間の返還ホリデーだったのだ。ゲストハウスは8階建のビルの中にあり、そのビルのオーナーが五連休だからというので、ガスもお休みにしてしまった。おかげで5日間まるまる水シャワーを浴びたのだった。モンコックの友達の部屋は、四角い部屋に隙間なくベッドが置かれ、もう一つベッドが入れば完璧に床が埋まる、パズルみたいな部屋だ。でも、シャワーはちゃんとお湯が出るのだというからちょっとうらやましい。

 返還当夜、セントラルにあるランカイフォンへ行った。ここは特に欧米人が集まる場所で、旧正月には大変なにぎわいを見せる。一口に言うと「気軽に狂える」ところである。思い思いに返還を待ちわびる姿が見られ、各国からのテレビ中継も入り、カウントダウンを待ちわびる。あるカメラマンがイギリス国旗を持つ東洋人にカメラをあてた、その瞬間、彼はカメラに向かって「FUKER CHINA!」と叫んだのだった。

 …返還当夜、それぞれに香港への思いはある。その表現はまさにさまざま、良し悪しにせよそれだけみんな「香港が好き」という気持ちは同じなのだ。
 返還前、世界中のマスコミが香港を駆け抜け、いろんな観点から議論がされ、移民者は急増。カナダ、オーストラリア、サイパンへ移民した香港人は新たな生活を望んだが思うようにはいかなかった。移民するのも楽ではない。カナダで支払う税金は約50%、香港で10数%の税金を支払っていた香港人は反対に香港へ出稼ぎに行くようになり最終的には香港へ帰る。

 オーストラリアは移民に対する条件が悪く、住みづらい。またアメリカで生活するにはお金がかかり、サイパンはあまり人気がないようだ。逆に香港にとどまった彼らは香港の不動産が高値なため、香港の4分の1の価格で立派な庭付き一戸建てが購入できる中国大陸へと引っ越し者が急増しているという。

 返還から4か月。香港紙幣からは徐々にエリザベス女王の顔が消え、フェリー、土産屋、オフィス等には中国国旗と香港の旗が掲げられ、中国経済特区の「香港」であることを、私自身再確認した。

 現在、観光客のシェアは中国、台湾、韓国。以前はハワイと同じぐらい日本人が氾濫していたが、マスコミや物価上昇で「香港は痩せた」と勝手なイメージから観光客が減少している。しかしバブル全盛期当時、日本人観光客が湯水のように金を使うから物価が上昇したともいわれ、今問題になっている対日本人観光客の料金設定問題は特に、今更始まったことではない。昔からそういうシステムでできているのだ。ただ単に「今、知った」だけのことである。

 しかし、この旅で見て、感じた限り、観光で香港を訪れ、買い物や食事ぐらいならなにも不都合はない。逆に以前よりも接客態度、サービスが良くなっている。
 ある香港人が、「お客様は神様。でも香港はまだまだ接客、サービス精神が欠けているんだ。もっと進歩しなきゃだめなんだよ。」と以前じゃ考えられない発言にびっくり。

 商売が難しくなると人間前向きになるのは、どこも同じらしい。この横浜中華街もそうだから…。最後に、返還後なにか変化はあった?の質問に「そんな四か月の間に目に見えて変化してしまったら、もうとっくによその国へ移民しているよ。」とごもっともの回答をしてくれました。



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