母なる河より他、知るものはなし

Fromインド【by小熊猫】

 マハラジャの国、India.
富と貧困、生と死、混沌と雑踏が交錯し、森羅万象の縮図が描かれるその大地には、互いに微妙なバランスを保ちながら8億もの人々が育まれてる。

 今回はこのインドでここ数年来起こっているインド版農民一揆(?)についての話をお届けします。

 「インド」と聞くだけでそのアドレナリンが身体中を駆けめぐってしまう人は多い。Asianジャパニーズの最終到達地点。自分を見つけたくて、でも見つけられなくてたどり着く場所。そして、その途方もない多様性で全てを受け入れてしまう寛容さ。インドには世界中から様々な理由で様々な人とものが集まってくる。

 しかし、「来るもの拒まず」のインドでここ数年、ファーストフードの進出による暴動騒ぎが起こっている。業界の「ドン」マクドナルドが96年、首都ニューデリーに1号店をオープン以来、インドにはケンタッキーフライドチキン(KFC)、バーガーキングなどが次々と上陸。しかし、牛を尊ぶお国柄のため、メニューにビーフバーガーはなく、さらに「インドのシリコンバレー」として知られる南部のバンガロー市では、KFC店が反対派の農民に襲撃されるという事件が勃発。ファーストフード反対熱は過激だ。

 その理由は宗教的なものだけではない。インドの知識人達は、大量消費文明への懐疑の念を様々な問題を通して指摘している。ファーストフード各社が統一規格で用いるじゃがいも品種の遺伝的な特質と、それが人体におよぼす影響、有害な添加物の問題、そしてそのような食文化を押しつけるビジネス手法などなど…。

 輪廻(りんね)の国インドでは大量消費文明が否定されつつあるようだ。さてさて、大量消費文明にどっぷり浸かり享受している我々は、これからいったいどこへ向かっていくのであろうか?

 そう、母なる河より他、知るものはなし…。


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