この曲この1枚

オペレッタ『ほほえみの国』

【 レハール 】



中華書店【劉継忠】


 中国を題材にしたオペラではプッチーニの『トゥーランドット』が有名だが、レハールが作曲した『ほほえみの国』は、『トゥーランドット』程有名ではないし、今までCDも出ていなかったが、最近東芝より当曲の代表的な演奏がCD化された(TOCE9562〜9563)のでこの機会にこの大変美しいオペレッタを紹介しておこう。

 宰相に指名されたスー・チョン(蘇聡?)はウィーン娘のリーザを伴い北京に戻る。二人は幸せな時を過ごすが、その幸せを封建的なしきたりが引き裂いてゆく。やがてスーの愛情さえ信じられなくなったリーザは、望郷の念止み難くウィーンへ帰ろうと計画し、それをスーの妹ミーが手助けする。

 リーザを心より愛するスーは彼女の幸せのために帰国を許す。リーザを見送る傷心のスー。その傍らでやはり恋人のウィーン子グストルとの別れに涙ぐむミー。スーはミーに「我らの国の人々は悲しい時も、苦しい時もいつもほほえみを浮かべて耐え忍ぶ」と優しく慰める。…というのがオペレッタ『ほほえみの国』の大筋である。

 レハールはこの悲しいドラマにエキゾティックで、極めて魅力的な音楽を書き与えた。特に第二幕でスーによって歌われるアリア『君は我が心の全て』はヨーロッパ音楽が残した最も美しい歌の一つである。

 このCDでスーを歌っているニコライ・ゲッタの30年前の歌唱は、どこかの三大(三老?)テノールが聞いたら裸足で逃げ出すような絶唱である。


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