(No.10-9809)【曽徳深】
 中華街パーキングは、スクラップアンドビルドの結果生まれ変わった。まず目立つのは正面部分の装飾、この部分の設計をした人の話では、北京空港から市内に入る高速道路の料金所を見て触発され、中国宮殿建築の様式を取り入れたという。

駐車場は車を入れる器という事で、制約された場所をいかに効率よく機能的に車を入れるかに設計の重点がおかれ、デザインはおいてきぼりを食っている。が、車の中にいるのは人間だということに目を向ければ、いかに人間にとって心地よく過ごせるものにするかはもっと重視されてよい。その意味で、新駐車場は入り口の装飾もさる事ながら、待合室が抜群によい、ゆったりとして、ちょっとしたホテルのロビー並である。

その中でも身障者用のトイレも備えた洗面所がよい。以前来街者のアンケートを採ったところ、一番要望があったのは公衆トイレであった。「食べるだけ食べさせて、その後処理をする場所を用意してないとは何事か」というきついおしかりもあった。

そのために2年前建て替えた横浜市関連の山下町駐車場がトイレに普通より大きなスペースを取っているし、加賀町警察署のそばには蘇州の民家風の公衆トイレ「洗手亭」が横浜市によって設置されている。中華街憲章に「礼節待人」という一章がある。人に接するに礼節をもってせよということだが、「衣食足りて礼節を知る」「足るを知るものは楽也」の言葉のとおり、心のゆとりがホスピタリティを生む。駐車場のおじさんが笑顔で出迎え、笑顔で見送ってくれたら、中華料理が一段とおいしく感じられるだろう。


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