音楽の愉しみ

『魔笛』の魅力



 9年ほど前になるが渋谷の東急BUNKAMURAの主催で日中合作オペラ「魔笛」の興行があり、合作という言葉に引かれ出かけていった。結果的にはこの出会いが私のオペラ開眼となり、その魅力に引き込まれるきっかけとなった。
 「魔笛」は作曲家モーツアルトが35歳で亡くなる直前に作られたオペラである。
 物語は王子と王女が魔法の笛に導かれ試練の末、結ばれるという愛がテーマのお話で夜の女王と侍女、鳥刺し(パパゲーノ)、老女(実はパパゲーノのかわいい女房)、高僧、弁者、童子、それに怪獣から鳥たち、動物たちまでが次から次に登場し物語を楽しく織りなす。夜の女王と侍女はめっぽう強く、王子、パパゲーノは頼りなくヘナチョコおのこである。時代は中国の古代という設定で北京京劇院による舞台装置。衣装と中国側の配役たちは中国風である。日本側は公家のいでたちで、不思議なことにこれらがドイツ語オペラとの違和感は少しもなく、オペラのよさを引き立てている。出演者の中で女王を歌った崔岩光という歌い手は大連出身、高音を見事にコロガス超絶技巧とその美しい姿に聴衆は息をのんだものだ。
 祖国が生んだ美しい歌姫にあこがれ、その後2回の公演は知人友人を誘った。崔さんは92年に再来日し、現在日本で音楽活動を行い、押しも押されもしないオペラ界の大スターである。合作オペラ「魔笛」は今では取りのオペラとなってしまったがよく演奏されるオペラの一つなので読者の皆さんもぜひ一度ご覧になってはいかがでしょうか。美しい歌とおもしろいお話がドッキングしたこの歌芝居は皆さんをリフレッシュさせること請け合いです。


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