音楽の愉しみ

『椿姫』の滋力



 筆者/劉燕雪  今回は『椿姫』についてのお話である。 イタリアオペラの大作曲家ヴェルディによるものだが『アイーダ』『オテロ』『リゴレット』等男性的なオペラの多い中でこれはヴィオレッタという女主人公とアルフレードという若い貴族の成就することのない純愛物語である。酒と遊興におぼれた享楽的な生活をしているヴィオレッタをひそかに恋するアルフレード。初めは拒絶するがやがて二人は結ばれ田舎で愛の生活を営むようになる。そこにアルフレードの父親が現れ懇願され身を引く。その上、病に犯され悲しみのうちに短い生涯を閉じる。という筋書きである。オペラの見所は華麗な舞踏会、ヴィオレッタの美しさ、悲しさ、はかなさ、そして甘美この上ないアリア「ああそはかの人か」「花から花へ」、知る人ぞ知る「乾杯の歌」の数々。 以前この欄で紹介した日中合作オペラ『魔笛』で出会った中国出身のソプラノ歌手崔岩光さんはこのオペラを得意なレパートリーとしている。美しい容姿、しなやかではりのある美声はこのオペラのためにあるといえる。昨秋東京で演奏会形式の公演を行った折、幸いにもコーラス出演の機会を頂戴した(実は私はこの中華街で仲間たちと合唱活動を行っている)。合唱したのは「乾杯のうた」と第4幕のバッカナーレの二曲であったがアマチュア合唱団にとっては厳しい練習で5ヶ月の特訓を経て舞台に立った。憧れの崔さんとしかもフルオーケストラでオペラ体験をすることができ感無量。 さて『椿姫』はデュマの原作で岩波文庫に収められている。オペラと比べるとリアルでちょっとコワ〜イお話である。興味のある方はご一読あれ。

 


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