(No.18-9912)【曽徳深】


 アメリカはおかしな国だ、テレビのニュースを見ながらそう思った。州の名前は記憶に残っていないが、ある州の教育委員会が学校で進化論を教えてはならないという決定を下したという。  
 他の州にもそういう動きがあり、賛否各々の人が取材に対して己が主張を語っていた。進化論を小さな子供に教えてはならない理由の出発点は、人間をつくったのは神様であると「聖書」にあるからだという。そしてそこから派生して、二つの考えがあるらしい。第一の考えは、進化論そのもの自体が正しくない、だから教えてはならない。もう一つは、進化論は間違いではないが、「聖書」の教えと矛盾する、あい矛盾することを教えると子供が混乱し、心の健全な発育を阻害する、だから成長を待って教える。 
 人間は類人猿から進化したというのは、人類学や考古学などで発掘や各種の科学的方法で明らかにされており、文明社会では常識となっているので、進化論誤謬論が教育禁止の理由とは考えにくく、教育時期尚早論が主な理由と思われる。そうすると、人間形成において、科学真理と宗教いずれが大事かという問題に突き当たる。個人レベルでは多いに議論が分かれるところだが、政教分離の観点からと、プロテスタントとして形式を排除し、神を集団として崇めるのではなく、それぞれ個人が自分の信念に基づき神と向き合って対話するというアメリカ人の宗教観からしても、宗教を公教育に持ち込むのは理解に苦しむ。快刀乱麻に世界の矛盾をさばいているアメリカの、これはアキレス腱かもしれない。


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