宜興紫砂の茶壼
ぎこうしさのチャフ
清芳春(菜香新館5F)

『宜興紫砂珍品』浙江撮影出版社より

中国茶の楽しみの一つはその茶器。ときにより茶葉を変えるように、茶器も気分に合わせて替えるのが楽しい。大切なのはよい急須「茶壼」を選ぶこと。茶葉に合った材質、大きさ…。茶壼のなかでも最高といわれる、「宜興紫砂の茶壼」をご紹介しましょう


その歴史
その特徴
使うとき
中国茶の6種

その歴史

茶壼という限られた用途を持ちながら、宜興紫砂壼は多彩なデザイン、技術、作りの精巧なこと、文人趣味の装飾などから、芸術品としての価値をもつ茶壼が数多く、古来中国美術の一つの分野になっているほど。名のある作品は美術館に収まり、収集家が多数います。
 宜興の製陶の歴史は、新石器時代、良渚文化にさかのぼるといいます(4000年前!)。紫砂は宋時代に発見され製陶が始まりました。

宜興陶瓷博物館
 その紫砂を使って「宜興紫砂壼を作り始めた人」といわれるのは16世紀の明代・正徳年間の人、供春。そのころ、茶の飲み方がそれまでの煮出す方法から今のような飲み方に変わったといいます。供春の弟子の時大彬、時大彬の弟子の李仲芳・徐友泉の3人は「明代三大紫砂の妙手」といわれます。以来500年間技術革新が絶えることなく行われ、名工が輩出しています。「宜興陶瓷博物館」には、明代以前の陶片から現代までの歴史的名品を展示しています。

方圓牌ってなに?
「方圓牌」、これは「宜興紫砂工芸廠」(通称「第1工場」)の製品であることを示す信頼と伝統のブランド。土がいい、技術がいい。宜興紫砂の茶壼を手に入れるなら―信頼のおけるこの「方圓牌」のものを。収集の対象になる作家物からお求めやすい茶壼まであります。

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その特長

上海から車で4時間、太湖の西岸にある焼きものの町、宜興は鉄分を含む「紫砂」という鉱石を産します。これを地中から掘り出して粉砕し、水を加えて粘土状にしたものが紫砂泥。この紫砂泥の特長は、可塑性がよく、生素地は強度が高く、乾燥・焼成の収縮率が小さいこと。紫砂泥の色は、もともと紫泥・緑泥・紅泥の3種ですが、今は技術革新と需要により混ぜ合わせることも多く、製品は「五光十色」というくらい多色、部分的に色を使うことも見られます。
宜興紫砂工芸廠の焼成炉
 この紫砂泥を成形して、釉薬を掛けずに1200度ほどの高温で焼き締めた茶壼が、「宜興紫砂の茶壼」といわれるもの。この茶壼は発酵の進んだ青茶(烏龍茶)などを淹れるときに威力を発揮します。保温性がよいのでお湯が冷めず、表面に目に見えない気孔が開いていて通気性があるので渋味やあくなどが抜け、茶葉の味わいを引き出すので淹れたお茶がおいしい。そのため「世間茶具称為首(茶道具の中でも最高)」と、昔から珍重されてきました。
 「おいしく飲める」というだけでなく、陶器でありながら磁器と同じくらいの硬度があり丈夫で、ふたと身を軽く打ち付けると金属的な音がするのが特徴。

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使うとき

その1
釉薬が掛かっていない器で香りがつきやすいので、青茶(烏龍茶)・紅茶・黒茶(プーアル茶など)用には茶壼を分けて使う必要があります。青茶専用でも、固く丸めた烏龍茶(凍頂烏龍茶など)には茶葉が回る球型のもの、長い茶葉の烏龍茶(岩茶など)には平べったい形の口の広い茶壼、と分けて使いたい。究極的には茶葉ごとに茶壼を替える
その2
茶壼の大きさは、茶杯の大きさ・数とバランスよく。一煎で人数分の茶杯を満たすサイズのものを使い、注ぎきりにします。
その3
茶葉の分量は、使う茶壼の大きさで決めます。青茶の場合、茶葉の状況(丸め具合)にもより、葉が開いた時に器がほぼいっぱいになるように逆算して分量を決めます。紅茶・黒茶は器の1割程度。

養壺とは?
焼き締めの宜興茶壼は使いこむほどに味わいが増す器。手でさすりお茶を塗るなどして色つやが増すのを楽しみます、これが「養壼」。長年使い続けた茶壼は宝物で親から子に伝えられるほど。使用後は水ですすぐだけ、洗剤で洗ってはいけません。

工場では生活品も製造する
茶壺は一点ずつ手作り
宜興の街

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中国茶の6種

多種多彩な中国茶は、発酵の違いで六大茶といわれる6種に分類されます。茶葉には酵素があり、摘み取られた瞬間から光や酸素と反応して発酵しますし、菌類の作用による発酵を経るものもあります。その違いを緑、白、黄、青、紅、黒という6つの色名で示します。

緑茶 不発酵茶(酵素が発酵しないうちに熱処理) 龍井茶・碧螺春など
白茶 軽微発酵茶(水分を飛ばす工程で軽く発酵) 白毫銀針・白牡丹・寿眉など
黄茶 軽後発酵茶(緑茶をベースに菌類の作用で軽発酵) 君山銀針・霍山黄芽・蒙頂黄芽など
青茶 半発酵茶(発酵の程度は10%〜80%と幅広い) 鉄観音・武夷岩茶・黄金桂・凍頂烏龍茶・東方美人など
紅茶 完全発酵茶(100%発酵させる) 祁門紅茶・正山小種など
黒茶 後発酵茶(緑茶をベースに菌類の作用で発酵させる) プーアル茶・六堡茶など

この六大中国茶を加工したものに、緑茶や紅茶に花の香りをつけた「花茶」、緑茶や黒茶を型にはめて固めた「緊圧茶」があります。

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宜興紫砂壼を扱っていま〜す。
◆中 国 茶 悟 空 1 号 店
 045-641-5509(横浜中華街南門シルクロード)
◆中 国 茶 悟 空 2 号 店
 045-651-7823(横浜中華街蘇州小路)
◆中国茶館 悟空立川中華街店
 042-540-2289(JR立川・グランデュオ7階)
◆中国茶館 悟空台場小香港店
 03-3599-6785(台場・デックス東京ビーチ6階)

『宜興紫砂珍品』浙江撮影出版社より



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