「食」は杭州にあり(その2)
曽慕蓮(元・山西師範大学)


イラスト/浅山友貴

訳/豆彩編集部




 歴史ある古都杭州で育まれた料理はその多くに、由緒あるいわれや感動的な物語を有しています。 ここ杭州が有名な《観光天国》で毎年2千万の人が国内外から訪れることも、杭州料理に国内外の料理の優れたものを取り入れさせることになり、料理店は新しい素材、新しい調理法、新しい味の新杭州料理を絶えず生み出すことができるのです。かつて1956年に、西湖醋魚(草魚の甘酢かけ)、龍井蝦仁(小エビの龍井茶炒め)、宋嫂魚羹(魚のあつもの)、東坡肉(トンボーロー)など36の伝統的な杭州名菜が選定されましたが、90年代には新しい杭州名菜、蟹醸橙・鉄板鱸魚・稲草鴨(ワラ包みダック)・金牌扣肉(ブタばら肉の蒸し物)などが100以上も生み出されているのです。特集《美食天国、杭州》
 料理店の繁栄はまた、店の営業意識の刷新にも役立ちました。以前なら料理店で何を注文するかで客の身分地位を見ました、「食べっぷりを見る」のです。成金が羽振りのよい金持ちぶろうと店に入った途端、「まずは口をすすぐふかひれスープを持ってきてくれ」と言う始末でした。いまや料理店で食事することはステイタスでなく特別なことでもありません。たしかに大変高価なツバメの巣・フカヒレ・アワビもありますが、主流は大衆向けの、価格が実利的でむしろ斬新でおいしい料理です。また今は接待でなく家族友人と来る人が主です。新年や節句、誕生日、「友あり遠方より来たる」という時にみんなで料理店に集まることは、「おかず一皿」くらいのごく普通のことなのです。主婦の苦労を大いに省き、家族友人が集まって楽しく談笑してたいしたお金も掛からないとあっては、そうしないわけはないでしょう。
 文化の香り漂う雅な雰囲気、優美なしつらえの中で食事を楽しませるべく、料理店が内装にも力を注いでいることに触れましょう。ある店では一階ロビーの渓流に小橋が架かり、そこでおしどりがゆったり泳いでいます。ロビーの一隅には店主が収集した古い磁器や古美術品、クラシック家具などが飾られ、江南郷土文化の濃厚な息吹を感じさせます。このような食事環境は杭州では枚挙にいとまがありません。さらに驚くことはその料理店の規模です。営業スペースが1万平方mを超えるところがたくさんあり、最大1万8千平方m、これは中国内でもまれに見る大きさです。客が庶民的な値段で貴族のような気分を味わえる、このことも杭州の料理店業界が活気溢れますます盛んになることの重要な一因です。
 杭州レストラン業の盛況は、いくつかの有名な料理店が上海・北京だけでなく広州や香港にまで支店を出していることで証明されるでしょう。上海では売上の伸びない店が次々杭州料理を取り入れ、杭州料理店が今や2千軒以上あるといいます。一昨年杭州で全中国初の「美食節(グルメフェア)」が開催され、第2回も昨年ここで開かれました。各地の名厨師が腕前を発揮し技を披露し、杭州の人々は口福ばかりか目福も大いに楽しむことができました。近い将来、「食は広州にあり」という伝統的な言い方は「食は杭州にあり」と改められるのではないでしょうか。 


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