この曲この1枚

歌劇「蝶々夫人」

【 プッチーニ 】



中華書店【劉継忠】


 プッチーニは『トスカ』や『ラ・ボエーム』等の作曲家として有名だが、中でも『蝶々夫人』は〈愛の二重唱〉や〈ある晴れた日に〉〈ハミング・コーラス〉等全編にちりばめられた蠱惑(こわく)的としかいいようのない流麗甘美な旋律によって、世界中の人々に愛されているオペラである。〈お江戸日本橋〉や〈越後獅子〉〈さくらさくら〉等の日本の旋律の巧みな使用は、このオペラのエキゾティズムを一層引き立て、親しみやすくしている。

 上海音楽院出身の中国の若いソプラノ歌手イン・ファン(黄英)が蝶々さんを歌ったCD(ソニーSRCR1835なんと1000円!)は、全曲ではなくハイライト盤なのが残念だが、彼女の瑞々しく清純な声と、いかにも芯の強そうな役づくりが光る一枚である。ピンカートンを歌うアメリカのテノール、トロクセルの若々しく若干軽めの声もそのやや軽薄な役所にはピッタリで、この他シャープレスを歌うカウワンの美声もすてきだし、なによりも勘所を押さえたコンロンの指揮がすばらしい。

 なおイン・ファンにはこのCDの他にプッチーニ、ヴェルディを中心としたオペラアリア集が出ており、やはり大変魅力的なCDなので、あわせてお薦めしておく(同SRCR1783)。

 それにしてもイン・ファンのこの美声と歌、ただものではない。青いレモンのような清純な香りが漂うが、時としてハッとするような妖艶で大人っぽい雰囲気を醸し出す。大歌手になることを予感させる声であり、歌唱である。


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