この曲この1枚

「チャイナ・ガール」

【 ヴァネッサ・メイ 】



中華書店【劉継忠】


 このCDはシンガポール出身でイギリス在住の中国系ヴァイオリニスト、ヴァネッサ・メイにより、香港の中国回帰を記念して制作されたアルバムである(東芝TOCP50400)

 『バタフライ・ラヴァーズ・コンチェルト』の名で知られる中国のヴァイオリン協奏曲『梁山伯と祝英台』をメインに、プッチーニの中国を題材にしたオペラ『トゥーランドット』の中の名旋律をヴァネッサが編曲した『ヴァイオリン・ファンタジー』と、彼女自身の作曲になる『ハッピー・ヴァレー・一九九七年香港返還記念序曲』の三曲が収録されている。

 『梁祝協奏曲』はその題材と旋律を浙江省の越劇から取り、西洋のヴァイオリン協奏曲の形式を用いて、中国の民間に古くから伝わる梁山伯と祝英台の悲恋を、叙情的かつ劇的に描いたもので、長野オリンピック女子フィギュアの銅メダリスト陳露が用いた曲といえば思い出される方も多いと思うが、その美しさから中国ばかりでなく世界中で広く愛奏されており、このCDの他にも、日本のヴァイオリン奏者西崎崇子のCD等数種がリリースされている。

 ヴァネッサのヴァイオリンはパッショネートで、彫りが深く、扇情的なヴィヴラートは抗しがたいような魅力を持ち、時に用いられる大きなポルタメントは中国人以外の何者でもないことを感じさせるが、それらがどんな時にも下品にならず、洗練と気品を兼ね備え、彼女の体内に流れるもう一つの血である英国の知性を感じさせる。


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