世界の街角で

大連訪問記

文と写真【黒瀧雄治(新光貿易)】


 成田から飛行機で3時間、市制百周年でにぎわう遼寧省大連を仕事で訪問しました。大連は地理的には東京より約3,000キロメートル、日本に一番近い大きな都市です。朝鮮民主主義人民共和国のすぐ西にある渤海湾と黄海に挟まれた遼東半島の先端に位置されます。大連より西に80キロメートル行くと、司馬遼太郎の名著『坂の上の雲』の舞台になる旅順、現在の旅大があります。
大連に着いてまず驚いたのは街の雰囲気です。中国はどこに行ってもなにか街の色がほこりっぽい感じを受けます。自分なりに考えてみましたがどうも建物がレンガ造りで全体的にレンガの色が強いためだからと結論づけました。
ところが大連の建物の色はパステルカラーのピンクやグリーンが多いために非常に鮮やかな感じを受けます。港町のためもあるのでしょうが、海外の流行などの情報伝達は中国のほかの都市に比べて速かったのではないでしょうか?女性のファッションも香港や上海などに負けないくらいです。
 さて今回大連を訪問したのは中華料理の前菜に欠かすことができない海 皮(ハイザーピー/クラゲのこと)の検品と購入のためです。大連は舟山・温州・青島などと並んで中国におけるクラゲの一大産地であります。昔は渤海湾産のクラゲは大変品質がよく人気がありましたが、現在は漁獲量の減少にともない、産地から加工場へと変わってきています。一般的にクラゲは傘の部分を加工したものを「皮」、足の部分に当たるところを「頭」といいます。中華料理屋で前菜として出てくるのは、この「皮」を6ミリメートル〜10ミリメートル幅に切ったものを調理して出してくるのです。クラゲの魅力はそのコリコリ感でしょう。この食感で「頭」の部分も人気があります。
 検品は倉庫の内で行いますが、この倉庫がちょっと変わっています。もともとはなんと防空壕だったところ!1960年代の旧ソ連フルシチョフ首相のいわゆるスターリン批判に始まった中ソ対立時に造られた防空壕を、現在倉庫として利用しているのです。山の中腹の岩を貫いて造られた防空壕は大型爆弾が直撃してもビクともしないそうです。入り口は20センチメートル厚の鉄板でできており、大型のトラックが走行可能な坑道に枝状に40メートル×15メートルの部屋がいくつもあります。内部は暗くて、坑道の一番奥まで行くのは大人でも気が引けます。山を貫いて造ったものなので一年を通してわりと室温は安定していて、クラゲの保存には最適な場所だとのこと。ただし検品時、クラゲの色を確認するには暗すぎるので、色の確認はどうしても防空壕の外で行うことになります。
 一日中検品作業で疲れた我々を見かねて、同行した、中華街で中華食材を扱う耀盛號の李専務が中国サイドの社長に掛け合ってくれて、最終日に少しだけでしたがドライブに行くことができました。  市内からわずか20分くらいで海岸線に出ることができます。案内してくれた社長によると、20年前に部分的に開通していた大連市を中心とした海岸沿いの道路が、5年前に全線が開通したとのこと。浜海路から海軍路と、ワインディングロードを走ることができます。特に浜海路近郊は中国政府要人の別荘が建ち並ぶ保養地。海水浴場もあり、海には日本の松島のような風景画が広がります。大連に行くチャンスがあればぜひ行っていただきたいスポットです。
 ところで中国に行くと最大の楽しみはやはり食事に尽きます。大連は渤海と黄海という大きな海に挟まれ海の幸にこと欠くことはありません。訪問した6月は夏ガツオやアサリ等の貝類、出始めたシャコなどが食卓の上をにぎわします。中国では珍しく生のウニやカキが出てきます。食べ方はしょうゆにわさび、ちょっとおなかの調子が気になる人は遠慮したほうがよいかもしれません。食卓に着けばお決まりの乾杯が始まります。大連ビールもくせがなく大変美味。白酒も「好!」。
 クラゲを使った一品でおもしろいものを出してもらいましたので紹介させていただきます。クラゲにしょうゆ・にんにく・酢などで味付けしたものを、ゆでた白菜でのり巻状に巻いたものを切ってお皿に並べてできあがり。大変「好!」。
 今回の訪問はわずかな時間しか大連に滞在することはできませんでしたがまたぜひプライベートでも行ってみたい街です。
 なにかほっとするすてきな街でした。


 



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